離婚届を出す前に決めておきたい6つのこと

監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 弁護士

離婚届を出す前に

離婚届を出す前に決めておきたい6つのこと

夫婦で話し合い→離婚することに決まった→役所に離婚届を出し→「離婚」成立です。
手続きは簡単ですが、離婚届を出す前に、次の6つについて夫婦で決めておくことをおすすめします。

  • 未成年の子どもの親権者
  • 未成年の子どもの養育費
  • 未成年の子どもとの面会交流
  • 財産分与
  • 慰謝料
  • 年金分割の割合

未成年の子どもの親権者は、離婚届に書かないといけないので、必ず決めておく必要があります。
しかし、それ以外のことについては、「相手と関わりたくない」「早く離婚したい」「もめたくない」、そのような理由で相手と話し合いをしないで離婚届を出してしまう方がいらっしゃいます。

これらは決めなくても離婚届を出せますが、離婚後の生活を考えると、お金のことは離婚届を出す前に決めておくことをお勧めします。
離婚後に相手と話し合うことは難しいことが多いです。また、財産分与、慰謝料そして年金分割は請求する期限があるので、ご注意ください。そして、決めたことは必ず書面に残しておきましょう。

このコラムでは、離婚届を出す前に決めておきたいことについて、なぜ決めておいた方が良いのか、どのような内容が良いのか、書面に残す方法などについて見ていきます。また、不利な離婚になりやすい場合となりくにい場合についても解説しています。

離婚した後の人生が幸せなものになるように、離婚届を出した後に後悔しないように、是非ご覧ください。

未成年の子どもの親権者

結婚している間は、別居していても、夫婦が子どもの親権者ですが、離婚すると、夫婦の一方が親権者となります。離婚届を出す前に、どちらが子どもの親権者となるか、夫婦で決める必要があります。

考える際のポイントは、「子どもの幸せ」です。
一般的には両親と一緒に生活することが子どもの幸せでしょう。しかし、それが難しい状況の場合、子どもにとってどのような環境が幸せか、夫婦で考えてみてください。

「経済力のある親が一緒に暮らす方が子どもを幸せにできる」という考え方もあります。
しかし、経済力のある親が経済力のない親に「養育費」を支払うことで、この問題は解決します。

なお、親権が争われた際、裁判所が親権者を決めるときの判断材料とされているのは、主に以下の要素です。

  • 監護の継続性
    子どもの幸せを考えて、これまでの環境をなるべく変えず、子どものストレスをなるべく少なくするように配慮されます。
    一緒に暮らす親についても、これまで主に子どもと関わってきた親の方が子どもにとっては良いと判断される傾向にあります。
  • 母性優先の原則
    子どもが乳幼児の場合、子どもには母性的なつながりの強い親が必要だと判断されやすいです。
    「母性」は母親に限らず、父親でも、食事の世話、おむつ替え、寝かしつけなど日常の関りがあれば、問題ありません。
  • 子の意思
    子どもが自分の意見を言える10歳前後以上であれば、まず子どもの意見を聞きましょう。
  • 面会交流の許容
    子どもの幸せのため、離婚後も両方の親と関りを持てる環境を用意できる親が親権者としてふさわしいと考えられています。

親権については、「子どもの親権について」もご覧ください。

未成年の子どもの養育費

「離婚した後は相手と関わりたくない」「どうせ払ってもらえない」、そのような理由で養育費の請求をあきらめていませんか?

養育費は、親が子どもに対して、自分と同じような生活をさせる義務(生活保持義務)に基づいています。
子どもを育てるために、お金は大事ですよね。子どものためにも、養育費について、離婚前に決めておきましょう。
きちんと決めて、それを文書に残しておけば、相手が支払ってくれなくなったときも相手に請求しやすいです。

養育費については、「離婚後に相手が養育費を払ってくれない場合」もご覧ください。

養育費の額

では、どのくらいの金額が妥当なのでしょうか。

参考になるのは、裁判所が基準に使っている「養育費・婚姻費用算定表」です。
お互いの収入から簡単に養育費の額がわかります。
裁判所での話し合い(調停)では、この算定表の額で決まることが多いので、この額を参考にするのが良いでしょう。

それに加えて、子どもの医療費など、特別な事情があるときは、それも考慮に入れましょう。

また、予備校の費用を含めた子どもの大学進学費用についても検討しましょう。
養育費の中には、大学進学費用は含まれないのが原則ですが、金額が大きいので、相手が負担してくれるのならば離婚前に決めておきましょう。

決まった養育費についての合意書

相手と養育費について合意できたら、文書に残しましょう。

費用はかかりますが、「強制執行認諾文言付きの公正証書」を作っておくと、相手が約束通りに支払ってくれなくなったときに、すぐに強制執行(給与の差押えなど)をすることができます。

公正証書を作るのは大変、という方は、次の文例を参考にして合意書を作ってください。
文例1は、基本的な内容のものです。

文例1
〇〇は、△△に対し、長男□□の養育費として、2022年8月から同人が満20歳に達する日の属する月まで、1か月3万円を、毎月末日限り、長男名義の☆銀行★支店普通預金口座(番号0123456)に振り込む方法により支払う。なお、送金手数料は〇〇の負担とする。

2022年×月×日(合意した日)  〇〇 ㊞  △△ ㊞

文例2は、子どもが大学等に進学した場合についての取り決め例です。

文例2
  1. 〇〇は、△△に対し、長男□□の養育費として、2022年8月から同人が満20歳に達する日の属する月まで、1か月3万円を、毎月末日限り、長男名義の☆銀行★支店普通預金口座(番号0123456)に振り込む方法により支払う。なお、送金手数料は〇〇の負担とする。
  2. 〇〇は、△△に対し、長男□□が大学またはこれに類する高等教育機関に進学したときは、同人が卒業する月まで、前項と同額の養育費を支払う。
  3. 〇〇は、△△に対し、長男□□が大学に進学したときは、大学の入学に係る入学金及び年間授業料を、第1項記載の口座に振り込む方法により支払う。
  4. 〇〇と△△は、長男□□について、病気・進学等、臨時の出費を必要とする場合には、その負担について、別途協議して定める。

2022年×月×日(合意した日)  〇〇 ㊞  △△ ㊞

未成年の子どもとの面会交流

親子の関係は離婚後も続きます。離婚によって親権がなくなった親も、引き続き子どもと関りを持つことは、両親から愛されていると実感でき、子どもの幸せにつながると考えられています。

「もう相手と関わりあいたくない」という気持ちもわかりますが、面会交流は子どものための制度です。
DVがあった、子どもが会うのを嫌がっているなどの事情がない限り、離婚後別居する親と子どもの関り方を決めておきましょう。

面会交流について詳しくは、「子どもとの面会交流」をご覧ください。

面会交流の方法

面会交流は、直接会うだけでなく、手紙やメール・LINEなどのやりとり、プレゼントを渡す、学校の行事に参加する、一緒に宿泊するなどの方法があります。

また、子どもだけで行くのは心配だけど相手と会いたくない場合は、親族や友人が付き添う、などの方法もあります。

決まった面会交流についての合意書

相手とは、面会交流の方法、頻度、送迎方法、立ち会いの有無などについて決めて、次の文例を参考にして合意書を作成しましょう。

文例1
〇〇は、△△に対し、以下の要項のとおり、△△が長男□□と面会交流することを認める。

  1. 面会交流は、1か月に1回、宿泊なしの面会とする。
  2. 〇〇及び△△は、具体的な日時・場所・方法等について、子の福祉を尊重し、協議して定める。
  3. 〇〇及び△△は、ショートメールにより連絡をとりあうものとする。

2022年×月×日(合意した日)  〇〇 ㊞  △△ ㊞

文例2
〇〇は、△△に対し、以下の要項のとおり、△△が長男□□と面会交流することを認める。

  1. 面会交流は、1か月に1回、第1日曜日とし、午前11時から午後2時までの3時間とする。
  2. 〇〇及び△△は、JR津田沼駅改札口において長男□□を相手方に引渡す。
  3. 長男□□の病気その他やむを得ない事情により第1項の日時を変更するときは、事前にショートメールにより双方協議の上、振替日時を定める。
  4. 〇〇は、△△に対し、△△が、長男□□が通う学校の運動会及び授業参観に参加することを認める。

2022年×月×日(合意した日)  〇〇 ㊞  △△ ㊞

財産分与

「分ける財産がない」「話し合うのが面倒」と思って、財産分与について話し合わないで離婚届を出す方がいらっしゃいます。
「貯金はないし、不動産も持っていないから、財産分与は関係ない」と考えがちですが、そのほかにも財産分与の対象になる財産があります。

財産分与の検討対象としては、プラスの財産である積極財産とマイナスの財産である消極財産があります。

【積極財産】
不動産、預貯金、株式、生命保険、年金保険、学資保険、社内預金、財形貯蓄、勤務会社の持ち株、退職金見込み額、企業年金、自動車、自営業者の自社の持ち株など

【消極財産】
住宅ローン、自動車ローンなど

そして、見落とされがちなのが、「未払婚姻費用」です。
別居した後に生活費が支払われなかった場合、その分を「未払婚姻費用」として相手に請求できます。
預貯金のように実際に目に見える財産ではないので見落としがちですが、長期間の別居の場合、相当高額になる場合がありますので、注意が必要です。

財産分与について詳しくは、「財産分与とは?」をご覧ください。

夫婦の財産は半分に分ける

離婚時に、結婚してから夫婦で築いた財産を半分に分け合うのが財産分与です。
簡単な流れは次のとおりです。

  1. 離婚時(すでに別居しているときは原則として別居時)のそれぞれの財産とその金額を書き出す
  2. そこから個人的な財産(相続で受け取った財産など)を消す
  3. 残った財産の金額を合計して、その2分の1の金額を計算する
  4. それぞれが受取る金額が2分の1の金額になるように調整する

調整の仕方は、現金を渡す方法と、現物を渡す方法があります。

決まった財産分与についての合意書

相手と財産分与について決められたら、文書に残しましょう。

費用はかかりますが、「強制執行認諾文言付きの公正証書」を作っておくと、相手が約束通りに支払ってくれなくなったときに、すぐに強制執行(給与の差押えなど)をすることができます。

公正証書を作るのは大変、という方は、次の文例を参考にして合意書を作ってください。

文例
〇〇は、△△に対し、婚姻費用の分担金の清算分及び財産分与として200万円の支払い義務のあることを認め、これを次のとおり分割して、△△名義の☆銀行★支店普通預金口座(番号1234567)に振り込む方法により支払う。
(1)2022年8月31日限り100万円
(2)2022年9月から2023年11月まで、毎月末日限り5万円
(3)2023年12月31日限り25万円

2022年×月×日(合意した日)  〇〇 ㊞  △△ ㊞

慰謝料

結婚中に相手から暴力を受けた、相手が不倫した、といったことが原因で離婚することになったときは、相手に慰謝料請求できます。

相手から暴力がある場合は、請求すると相手を刺激して、さらに暴力を受ける可能性があるので、ご本人からの請求は難しいでしょう。暴力の証拠(写真や日記、診断書など)を持参して、警察や「配偶者暴力相談支援センター」、弁護士などにご相談ください。

相手から暴力があるときは、「DV(家庭内暴力)による離婚」もご覧ください。

相手が不倫した場合の慰謝料の相場は、100万円~300万円程度です。
相手が支払いを認めた場合は、次の文例を参考にして、合意書を作ってください。

文例
〇〇は、△△に対し、慰謝料として、100万円の支払い義務のあることを認め、これを2022年8月末日限り、△△名義の☆銀行★支店普通預金口座(番号1234567)に振り込む方法により支払う。

2022年×月×日(合意した日)  〇〇 ㊞  △△ ㊞

相手が不倫した場合の慰謝料については、「不貞の慰謝料~相場・算定方法について~」をご覧ください。

年金分割の割合

夫婦の一方または双方が結婚期間中に厚生年金・共済年金に加入していた方は、年金分割の割合を決めてから離婚届を出した方が良いです。

(2008年(平成20年)4月1日以降に結婚した方で、相手の「被扶養配偶者」(国民年金の第3号被保険者)だった方は、割合を決める必要はありません。相手の合意なしで、離婚後2年以内に一人で年金分割の手続きができます。)

離婚時の年金分割制度の対象となるのは、結婚期間中の厚生年金と共済年金です。
そのため、結婚期間が長い夫婦ほど、年金分割した場合に受け取れるようになる金額が大きくなります。
分割の割合は、2分の1にしましょう。

相手と年金分割の割合を2分の1と決めた場合は、次の文例を参考にして、合意書を作ってください。

文例
〇〇と△△は、次の事項について合意したので、ここに合意書を作成する。

  1. 厚生年金保険法第78条の2第1項の規定に基づき、標準報酬の改定または決定の請求をすること。
  2. 前項に規定する請求について、請求すべき按分割合を0.5とすること。
  3. 2022年×月×日(合意した日)  
    (個人番号または基礎年金番号)(生年月日)〇〇 ㊞  
    (個人番号または基礎年金番号)(生年月日)△△ ㊞

離婚後2年以内に、お二人(代理人でも可)で「標準報酬改定請求書」と「合意書」を年金事務所にお持ちください。
その際、次の書類も一緒に持っていきます。

  • 請求書・合意書に個人番号を記入→個人番号がわかる書類
    請求書・合意書に基礎年金番号を記入→基礎年金番号がわかる書類
  • 本人確認書類(代理人の場合は委任状と代理人の本人確認書類)
  • 結婚期間がわかる戸籍事項全部証明書
  • 請求日前1か月以内に作成された、お二人の生存を証明できる戸籍事項全部証明書または住民票

年金分割については、「離婚時の年金分割について」もご覧ください。

不利な協議離婚になる場合、ならない場合

結婚して10年以上の夫婦が協議離婚する場合、お金のこと(養育費、財産分与、慰謝料、年金分割)について決めずに離婚届を出すと、不利になりやすいのでご注意ください。

結婚10年未満の夫婦

妻の立場からすると、結婚してあまり年月が経たず(せいぜい10年未満くらいまで)、子どもが小学生以下くらいまでの場合は、養育費を決めて協議離婚するのであれば、それほど不利になることは少ないと思います。
なぜならば、

  • 財産分与の対象となる「婚姻後増えた夫婦の財産」が、それほど高額にならないことが多い
  • 養育費について、裁判所の基準で算定する金額が実際の養育にかかる金額よりも遥かに少ないので、夫に必要性を訴えて、協議したほうが高くなる可能性がある

からです。

「裁判所の基準」で養育費がいくらになるのか、「養育費算定表」を確認しておくことをおすすめします。

結婚10年以上の夫婦

しかしながら、10年以上年月が経過した夫婦の場合は、離婚したときに財産的にどのくらい相手に請求できるか、弁護士に相談されることをおすすめします。
なぜならば、

  • どのような財産が分与の対象となるのか
  • 分与の計算をどのようにするのか

個別に、具体的に考える必要があるからです。

まとめ

離婚は長年の共同生活の精算ですので、後悔しないように、知識だけは得ておきましょう。

裁判所が携わる離婚においては、調停手続きにおいても、当事者間に全く争いがない場合は別として、養育費や財産分与については、一定の基準にそって解決するよう助言がなされます。
従って、協議離婚の場合にも、裁判所に申し立てるとどのような結論が導かれるのか、ある程度予備知識を持つことが、不利な協議離婚をしないための予防策といえます。

相手に暴力行為や不貞行為などがあった場合は、慰謝料請求のことも考えることになります。

わからないことや気になることがあったら、弁護士に相談してみてください。
インターネットでも知識は得られますが、ご自身の場合について、必ずしも当てはまるとは限りません。

そして、離婚届を出す前に、相手と話し合って決まったことをこのコラムを参考にして書面にまとめておきましょう。

最後に、協議であろうと、裁判であろうと、離婚の際には年金分割を忘れずにしましょう。

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