離婚問題

例えばこんな離婚相談 ~その3~


前回「~その1~」と「~その2~」では、結婚して6年の離婚したい妻からの相談を例にしてお話しました。
今回は、離婚したくない妻からの相談を例にしてお話いたします。


例2 妻からの相談(結婚20年・夫が不貞)

【現在の状況】

  • 結婚して20年、高校3年生の長男と中学1年生の長女がいる。夫は自営業、妻はパート勤務、長男は大学進学希望。
  • 夫名義の戸建て住宅に住んでいて、夫婦の預貯金と生命保険がある。
  • 夫名義の通帳は夫が管理しており、妻は夫から毎月一定の生活費をもらって家計管理している。
  • 夫は自営業なので、平日でも自由に外出している。


 

以上のような状況のもと、ある日突然、夫から離婚してほしいと言われた。
妻は、夫が不貞をしているとは思わなかったが、身内や友人から勧められ、興信所に調査を依頼したところ、夫の不貞が明らかになった。
夫は不貞を認め、離婚に応じてくれなければ、家を出ると言っている。
妻は離婚したくないというご相談です。

 

【妻の言い分】

 

  • 悪いのは夫なのに、一方的に離婚されてしまうのか。
  • 別居期間が長くなると離婚になると聞いたが、何年くらい別居していたら離婚されてしまうのか、不安だ。
  • 不貞相手の女性に慰謝料請求したい。


 

 

【手順の一例】


このようなご相談の場合、まず弁護士からアドバイスできるのは、次のようなことです。

 

  1. まず、夫の不貞を責めるのではなく、離婚したくない気持ちをはっきり伝えましょう。
    ただし、将来請求する慰謝料の金額などにも影響するので、いつから不貞関係を持ったかなど、不貞の事実関係についてはある程度聞いておいた方が良いです。
  2. 「別居するな」と言っても、出て行く夫を止めることはできないので、できれば行き先の住所を聞いておいてください。
    緊急時の連絡方法や職場も確認しておきましょう。
  3. 生活費を毎月妻の口座に振り込む約束を取り付けましょう。
  4. 難しいとは思いますが、子どもの授業料や塾代、大学入学金などについて、負担する旨の念書を書いてもらいましょう。
  5. 夫の財産に関する資料(不動産、預貯金、株式、生命保険など。会社員の場合は、財形貯蓄、持ち株、退職金など。)があれば、コピーやメモ、写真を撮るなどしておきましょう。
    これは、将来離婚するときの準備です。
    離婚するときは、原則として、別居時にあった双方の財産が分与の対象財産になります。
  6. 次の一手はどうしたらよいでしょうか?

 

【夫から生活費が送られてくる】


生活費が送られてくるうちは、こちらから法的手続きは取らない方が良いでしょう。
調停には、離婚調停だけではなく、夫婦関係円満調整調停もあり、同居を求めたり、夫婦関係を修復したいときに申し立てることができますが、このような調停を申立てると、逆に夫から離婚したいと言われ、実質的には離婚話になりかねないので、やめた方が良いです。
裁判所や弁護士に間に入ってもらって、夫婦関係を修復できることはまずないと考えた方が良いでしょう。

 

【生活費が送られてこなくなった】


生活費が送られてこなくなったときは、夫の住所地を管轄する家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申立てます。(住所地とは住民票上の住所地ではなく、実際に住んでいる場所です。)


ただし、少額でも毎月送られているうちは、インターネットで婚姻費用・養育費算定表を確認してからにしてください。裁判所が認めてくれる婚姻費用(生活費)は、妻にとっては極めて低額なので、申立てをしても意味がなかったり、逆に夫に婚姻費用を減額する口実を与えることになりかねません。
(婚姻費用(生活費)については、「離婚までの生活費の決め方」をご覧ください。)

 

【不貞相手の女性に対する慰謝料請求】


積極的な性格の方は、夫の不貞が判明した時点で、不貞相手の女性と直接会って、「もう夫とは連絡を取らない」とか「慰謝料を支払う」という約束の念書を書いてもらう方もいますが、そのような勇気のある方は少ないように思います。
夫が離婚まで考えていない場合には、そのような方法も有効ですが、今回の例2のように、夫が離婚の決心をしているような場合には、夫が相手の女性をかばい、直接会うことも拒否されると思います。


不貞相手の女性に慰謝料請求すべきかどうかは、状況次第です。
興信所の調査により証拠があれば、慰謝料請求の訴訟を起こした場合、金額の多い少ないはあるにしろ、慰謝料は認められると思います。
しかし、不貞相手の女性に「慰謝料を支払え」という判決が出たとしても、実際にお金を支払うのはおそらく夫でしょう。


また、夫は不貞相手にだけは迷惑を掛けたくないという気持ちがあるようです。
それまでは、申し訳ない(または後ろめたい)気持ちで、妻にある程度(ほぼ従前どおりの)生活費を送ってきたものが、妻が不貞相手に慰謝料請求をすると、怒って、全く支払わなくなったり、裁判所で認められる最低限の金額に減らして送金してきたり、場合によっては、「離婚だ」と言って妻に対し離婚調停を申立てるおそれがあります。


不貞相手に慰謝料請求をしても、慰謝料を実際に払ってもらえるのは、早くて数ヶ月、またはそれ以上後と考えた方が良いです。
子どもの受験時期と重なると、受験料や入学金についても夫から支払われる保証がなく、絶望的な状況になります。
そのためにも、日常的な貯えは妻にも必要と言えます。


また、慰謝料請求の金額も、相手の女性との不貞が原因で離婚することになったというのであれば、「夫と連帯して数百万円の慰謝料を支払え」と請求しますが、離婚せずに女性に対してだけ慰謝料を請求する場合は、金額も半減します。
あれこれ状況を考えると、相手の女性に慰謝料を請求すれば、夫と女性が別れると思われるような状況にあればともかく、そうでない場合は、ある程度状況を見極めてから、調停を申立てたり、訴訟を起こしたりする方が安全です。


慰謝料請求権の消滅時効は、不貞の事実を知ったときから3年ですので、そのことも頭に入れておきましょう。


次回は、例2の続きで、夫から離婚を迫られた場合についてお話します。
(「例えばこんな離婚相談 ~その4~」)

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