居場所のわからない相手と離婚したい場合

監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 弁護士

居場所のわからない相手と離婚したい場合

居場所のわからない相手と離婚する流れ

夫(または妻)が家に帰ってこない、連絡もとれない、実家や友人、職場に聞いても居場所がわからない。
そのようなときは、役所で住民票や戸籍の附票をとってみて、住民票を移していないか確認しましょう。
住民票に移動がないときは、警察に捜索願を出す、探偵に所在調査を依頼するなどが考えられます。
また、本人のSNSに新しい投稿がないか確認してみましょう。

生きているかどうかわからない場合も、どうやらどこかで生きているらしい場合も、本人と連絡が取れるまで待つ方はいらっしゃるでしょう。

一方、いくら探してもどこにいるのかわからない相手と離婚をして、区切りをつけたい場合は、
裁判 → 判決 → 離婚届提出
の流れで手続きすることになります。

通常、離婚の「裁判」の前には「調停」が必要(調停前置主義といいます。)なのですが、相手が行方不明の場合は調停に呼び出すことが難しいので、すぐに裁判をおこすことができると考えられます。

裁判でポイントとなるのは、法律で決められている「離婚原因」が存在することです。
法律で決められている「離婚原因」は5つあります。

  1. 不貞行為:相手が自分以外の人と性的関係をもつこと
  2. 悪意の遺棄:夫婦関係が壊れるかもしれないと知りつつ相手が同居しない、生活費を負担しないこと
  3. 3年以上の生死不明:警察に捜索願を出しても、あらゆる方法で探しても見つからず、最後の連絡から3年以上生死不明
  4. 強度の精神病:回復の見込みのない強度の精神病
  5. 婚姻を継続し難い重大な事由:上記以外の原因で回復の見込みがないほど夫婦関係が破綻していること

裁判では、法律で決められている「離婚原因」があることを証拠で示す必要があります。
(裁判離婚について詳しくは、「裁判離婚するためには」をご覧ください。)

相手が行先を告げずに家を出て、その後生活費を負担していないときは、「悪意の遺棄」に当たる場合があります。
また、3年以上生死不明状態であれば、それだけで離婚原因となります。
さらに、長期間相手と連絡が取れない状態は、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると考えられます。

居場所のわからない相手に離婚の裁判をおこす

離婚の裁判をおこすときは、裁判所に請求内容とその理由を訴状に書いて提出します。
訴状には、相手(裁判では被告といいます。)の住所を書く必要があるのですが、現在の居場所がわからないときは、「住居所 不明(最後の住所 千葉県船橋市前原西〇丁目〇番〇号)」のように記載します。

訴状は、裁判所から相手へ特別送達という手続きで郵送されます。
居場所のわからない相手への送達は、「公示送達」で行われます。
公示送達は、裁判所が相手に他の送達方法(休日等配達日指定の送達、就業場所への送達など)で送達できないときに使う最終手段です。
住民票上の住所を現地調査して相手が住んでいないと確認したこと、親族や勤務先、友人等に連絡をとって居場所がわからないと回答されたことなど、調査したけれども相手の居場所がわからないことを書いた「所在調査報告書」を「公示送達の申立書」に添付して裁判所に提出します。

裁判所が公示送達での送達を認めると、次の流れで手続きが行われます。

裁判所の掲示場に送達すべき書類をいつでも交付する旨を掲示
   ↓
2週間経っても相手が書類を受け取りに来ない
   ↓
相手への送達終了

多くの場合、離婚原因の証拠の一つとして、陳述書の提出と本人尋問が行われます。
陳述書は、相手と結婚してから現在までにあった、離婚原因となる出来事(エピソード)をご自身の言葉で述べた作文です。
本人尋問は、裁判所の法廷でご自身の代理人弁護士や裁判官からの質問に答える手続きで、その問答が証拠になります。

そして、裁判官が請求の原因と証拠を検討して、相当と認めれば、相手の出頭がなくても「原告と被告とを離婚する。」という判決が出ます。
財産分与や養育費などの請求も認められることがありますが、相手の財産を把握していて、強制執行ができるのでなければ、実際に受け取ることは難しいでしょう。年金分割は年金事務所に必要書類を提出すれば手続きできるので、請求に含めておくといいでしょう。

相手への判決の送達も公示送達で行われ、送達されてから2週間以内に異議申し立て(控訴)がなければ、判決が確定します。

なお、裁判は専門知識が必要になるので、弁護士に依頼することをおすすめします。

居場所のわからない相手との離婚届を出す

判決が確定した時点で、離婚は成立しています。
しかし、確定した日から10日以内に離婚届を出すことが義務付けられています。

判決の離婚届出用の省略謄本(裁判所が発行する省略されたコピー)と確定証明書、離婚届を役所に提出すると、相手との離婚手続きが終了します。判決がある場合は、離婚届の証人欄の記入は不要で、夫婦の一方だけで届け出ができます。

なお、未成年の子どもがいるときは、子どもを自分の戸籍に入れる手続きが必要な場合がありますので、ご注意ください。詳しくは、「離婚後の子どもの戸籍、氏(苗字)について」をご覧ください。

また、年金分割についての判決が出た場合と2008年(平成20年)4月1日以降に国民年金の第3号被保険者期間がある場合は、判決が確定した日の翌日から2年以内に年金事務所で年金分割の手続きをする必要がありますので、忘れないようにしましょう。

7年以上生死不明の相手の場合

行先を告げずに家を出て、いくら探してもどこにいるのかわからない相手が7年以上生死不明の場合、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることができます。

失踪宣告とは、生死不明の人を、法律上死亡したものとみなす制度です。
失踪宣告の審判が確定すると、生死不明になってから7年経った時点で亡くなったとみなされ、その人について相続が発生します。そして、婚姻関係は解消され、配偶者と死別したことと同じ状態になります。

夫婦関係がなくなるため、再婚が可能となる点では、失踪宣告と離婚に違いはないように見えます。
しかし、いくつか気を付けなくてはいけない違いがあります。

失踪宣告は取り消されることがある

失踪宣告が確定した後に、生きていることが判明したときは、本人または利害関係者が家庭裁判所に請求することで、失踪宣告は取り消されます。

失踪宣告が取り消されると、原則として、失踪宣告による「死亡」は最初からなかったことになります。
つまり、婚姻関係の解消はなかったことになるので、もし、失踪宣告の確定後に再婚していた場合、重婚状態になってしまいます(前婚と後婚と、どちらが有効になるかは、まだ確定的な判断はなされていません)。

そのため、失踪宣告の申立ての方が離婚の裁判手続きよりも簡便ではありますが、再婚を目的に失踪宣告の申立てをする場合は、取り消されるリスクを覚悟しておく必要があります。

一方、確定した離婚判決を取り消すことはできません。
たとえ、相手が生きていて、「自分がいない間に勝手に離婚なんて納得できない。」と言っても、確定してしまった判決を覆すことはできません。

失踪宣告のときは遺産相続、離婚のときは財産分与

失踪宣告の確定で、相続が開始します。
配偶者(夫または妻)は常に相続人になりますので、ほかに相続人(第1順位:子ども、第2順位:親、第3順位:兄弟姉妹)がいる場合は、その相続人と遺産分割することになります。ほかに相続人がいない場合は、すべての遺産を相続することになります。

もし、相手に借金がたくさんある場合などは、相続放棄の申述手続きをすると、プラスの財産(不動産や預貯金等)もマイナスの財産(借金等)も相続しないことになります。ただ、ご自身が相手の借金の保証人になっている場合は、相続放棄をしても、借金を返す責任は消えません。

離婚のときは、夫婦で築いた財産を、基本的に2分の1で分けます。
相続は自動的に発生しますが、離婚の財産分与は自動的に発生しません。
離婚裁判のときに夫婦の財産に関する資料を提出して、2分の1で分与するよう請求しましょう。
「被告は、原告に対し、財産分与として1000万円を支払え。」や「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の不動産につき、財産分与を原因とする所有権移転登記手続をせよ。」などの判決に基づき、強制執行手続きや登記手続きをすることになります。

ご自身の場合はどちらの方が経済的に有利になるのか、弁護士にご相談ください。

まとめ

夫(または妻)が突然家を出て、帰ってこない。残された家族は途方に暮れてしまうことでしょう。

当事務所で受任した、行方不明でどこにいるのかわからない夫(または妻)との離婚事件では、借金から逃れるために行方不明になってしまった場合が多いですが、理由がわからないケースもあります。いずれにしても、皆様、離婚裁判の提起と同時に公示送達の申立てをして、離婚判決に基づいて離婚届を提出し、無事に離婚できました。

いつか戻ってくるかもしれないと、待つ方もいらっしゃると思います。
一方で、一区切りつけて、新しい人生を歩みたい方もいらっしゃるでしょう。
そのような方は、裁判 → 判決 → 離婚届提出の流れで、離婚手続きをしましょう。

裁判手続きは専門知識が必要ですので、まずは弁護士にご相談なさってください。

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