DV(家庭内暴力)による離婚

監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 弁護士

男性につかみかかる女性

DVとは

DVで悩む女性

DVとは、英語の「domestic violence」(ドメスティック・バイオレンス)の略語です。
日本語では、家庭内暴力と訳されることが多いです。
DV自体について明確な定義はありませんが、配偶者(夫又は妻)及び配偶者と同視される親密な関係の男女間の暴力を言います。

このコラムでは、DVで悩んでいる方が身を守る方法や離婚手続きについてみていきます。

DV法

DV法とは

配偶者(夫又は妻)や内縁の夫又は妻からの暴力について、被害者を守るための法律があります。
ずばり、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」です。一般にDV法といわれています。

この法律でいう「配偶者からの暴力」とは、「配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むもの」とされています。

法律の条文のままなので、とてもわかりにくいですが、簡単にいうと、「身体への暴力」、「精神的ダメージを受ける言動」です。(ただし、保護命令の申し立ては、身体への暴力か、生命を脅かす脅迫のみ対象です。)

暴力が男女平等を阻害する要因であり、法が家庭に入っても排除すべきであるという考えに基づき制定されたものです。

DV法の対象

結婚中の相手からの暴力はもちろんのこと、離婚した元夫又は元妻や事実婚の相手、事実婚の元相手からの暴力も対象になります。

暴力というと、殴るとか蹴るとか、身体的暴力のみを考える方がいますが、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV法)の暴力は、身体的暴力だけではありません。

  • 何を言っても無視したり、ばかにしたりして、相手を精神的に追い詰めるモラルハラスメントのような精神的暴力
  • 生活費をほとんど入れないような経済的暴力
  • 嫌がっているのに性行為を強要する性的暴力
  • 配偶者が他の友人や親族と仲良く交流することを制限する社会的暴力

のような暴力があります。

DV法でどうやって身を守るか

では、この法律では、どうやって配偶者からの暴力の防止、被害者の保護をすることになっているのでしょうか。

まず法律では、都道府県・市町村が、被害者の相談、一時保護、自立支援などをするための「配偶者暴力相談支援センター」を設け、配偶者からの暴力の防止、被害者の保護に努めるよう書いてあります。

そして、身体的暴力又は生命に対する脅迫を受けた被害者は、相手(加害者)が近寄ってこないように、裁判所に保護命令を申し立てることができます。
裁判所が相手(加害者)に対して出す保護命令にはいくつか種類があります。

保護命令とは

裁判所
前記したように、DV法の暴力は身体的暴力に限定されませんが、特に

  • 暴行罪や傷害罪に該当する身体的暴力
  • 生命、身体に対し害を加える旨の脅迫

に対しては、保護命令が発令される場合があります。

保護命令とは、裁判所が加害者に

  • 被害者への6ヶ月間の接近を禁止する「接近禁止命令
  • 同居していた被害者が自宅から避難する準備のため最高2ヶ月間家から出て行くことを命じる「退去命令

をいいます。

ほとんどの方は、加害者に知られないうちに避難するので、接近禁止命令が申し立てられることが多いようです。
また、退去命令は加害者の生活に影響を及ぼし、権利を制限することが大きいため、裁判所は認めることが少ないです。

子どもや親族、友人への接近禁止命令も出されますが、これらの人への接近禁止命令は、これらの人に加害者が接近することにより被害者が加害者に会わざるを得なくなることを防ぐためです。
その理由を言わなければ保護命令は発令されません。
子どもへの接近禁止命令は、頻繁な暴力に子どもを連れて逃げたいけれど、子どもの通う幼稚園や学校を見つけられて連れ去られるなどの危険がある場合に利用されます。

このほかに、電話やファックス、メール送信などの迷惑行為を禁止する命令もあります。

保護命令に違反した加害者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。

保護命令を申し立てるために

暴力を受けたことの証拠

病院で受診
保護命令を申し立てるには、申立書に添えて、暴力を受けたことの証拠となるものが必要です。
例えば、

  • 写真
  • 診断書
  • メモ
  • 目撃者の証言

などです。

暴力を受けてあざができた場合などは、消えないうちに写真を撮っておきましょう。
その際には、あなたが被害者であることがわかるように、顔を一緒に撮りましょう。
顔と離れている部分については、

  • 顔と洋服
  • 同じ洋服と足先

などのように2枚撮ってください。

また、治療にはなるべく行くようにして、その際、配偶者からの暴力を受けたことを記載してもらっておいてください。
過去の治療の診断書でも、2年くらい前なら取ることができますし、医院によっては10年前のものを出してくれることもあります。

ただ、気をつけなければいけないのは、保護命令は「今後、生命、身体に危害を受けるおそれが大きい場合」に発令されるもので、10年前に暴力を受けたが、現在は全くない場合には、発令されません。

関係機関への相談

保護命令を申し立てるには、警察や女性サポートセンターに相談に行くことも必要になります。
申立書に相談日時、相談機関、相談内容などを記載しなければなりません。

保護命令は、一旦発令されると、加害者の権利や行動もかなり制限されますので、申立にはいろいろな要件等が課されているのです。

離婚の手続き

暴力に悩み、加害者から離れて再出発したいと考えていらっしゃる方が離婚をする場合、協議離婚では難しいことが多く、一般には調停、訴訟という手続きを踏んでいく必要があります。

調停で配偶者と会わないように、身の安全を図りつつ、離婚手続きを進めていくには、弁護士の助力が必要です。

また、離婚手続きをする以前に、何よりも身の安全を図る必要があり、

  • 避難の準備、方法、時期
  • 退去の際に持ち出すもの
  • お子様がいる場合の親権
  • 避難後の保護命令申立の必要性
  • 離婚の準備、離婚の際の養育費や財産分与請求

など、弁護士の助言がお役に立つと思います。

まとめ

ひと昔前の日本の家庭では、夫の言うことに従わない妻に対して、平然と暴力が振るわれ、警察に保護を求めても、「まあ、家庭内のことですから、奥さんも旦那さんをたてて、仲良くやってください。」と言われてしまうことが多かったと思います。

しかし、平成13年にDV法が施行されてから、3年ごとの見直しが図られ、女性サポートセンターが中心となって、各健康福祉センター、警察、裁判所、弁護士会等との連絡会議の回数を重ねるたびに、今ではかなりDVが犯罪であるという認識が浸透してきました。

最近では、身体的暴力のひどい場合は、女性サポートセンターと警察の連携により被害者にシェルターが用意されたり、警察が加害者を逮捕、勾留し、懲役刑まで科される例も増えてきました。
また、加害者から避難するための一時保護への助力や荷物の引き取りの立会等の協力もしてくれることがあります。

配偶者、同棲相手、恋人等から身体的、精神的な暴力を受けて困っている方は、まず警察や「配偶者暴力相談支援センター」、弁護士などにご相談下さい。

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