子どもの親権について

監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 弁護士

以前に比べて、離婚の際に子どもの「親権」を争うことが多くなったように感じます。
このコラムでは、子どもの親権とはどういうものか、裁判所が親権者を決めるときに考慮する点、親権者や監護者の変更などについてみていきます。
まず、「親権者」と「監護者」の違いについてみていきましょう。

子どもの「親権者」と「監護者」は、何が違う?

親権者

親権については、民法で次のように定められています。
「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」(民法818条)
「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。」(同上)
「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」(民法819条)
「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。」(同上)

結婚中は、夫婦が共同で未成年の子どもの親権を行使しますが、離婚後は、一方の単独親権となります。
離婚する前に、どちらが親権者となるか、決めなくてはいけません。
離婚届に「未成年の子の氏名」という欄があり、「夫が親権を行う子」「妻が親権を行う子」に子どもの名前を記載することになっています。

そして、離婚しても子どもの戸籍は自動的に親権者の戸籍に入るわけではありません。子どもは離婚時の夫婦の戸籍に入ったままです。例えば、離婚後親権を取得した妻が夫の戸籍から出た場合、妻は子の氏の変更の申立てをして、子どもを自分の戸籍に移すことができます。

なお、親子の関係は親が離婚しても続きますので、子どもの扶養義務は、親権の有無に関わらず、また同居・別居に関わらず、両親にあります。

ちなみに、未成年者は結婚すると、成年に達したとみなされるので、父母の親権はなくなります(未成年者が結婚するには、原則として父母の同意が必要です。)。

監護者

親権は、未成年の子どもに対する「身上監護権」と「財産管理権」に分けることができます。

「権」とあるので、権利だけをイメージされるかもしれませんが、義務も伴います。
民法では、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」(民法820条)と定められています。

「親権者」は親権を行う親、「監護者」は親権のうち「身上監護権」だけ行う親、といえます。

東京高裁の決定(平成18年9月11日)では、
「監護とは,親権の主たる内容である監護及び教育(民法820条),子の居所指定権(同法821条),懲戒権(同法822条),職業許可権(同法823条)を中心とする身上監護権を分掌し,子の財産につき管理及び代理する権限ないし養子縁組等の身分上の重大な法的効果を伴う身分行為について代理する権限は,親権者に留保され,監護権者にはこれらの権限は帰属しないと解するのが相当であるからである。」
とされています。

「身上監護権」は、子どもの世話や教育、しつけなど次のような権利義務をいいます。
・監護、教育
・居所指定
・子の利益のための懲戒
・職業の許可

「財産管理権」は、子どもの財産の管理や法律行為の代理・同意・取消などを指します。

離婚前に別居するときの注意点

離婚前に夫婦が別居状態になった場合、夫婦ともに親権者ですが、子どもと一緒に生活する親だけが監護者となります。
そして、離婚時に夫婦間で協議がまとまらず、裁判官が親権者を決める際、判断材料とする要素に「監護の継続性」があります。
子どもの環境は、特段の事情がない限り、変更しない方がよいとされているからです。

双方が親権を主張する場合、子どもの(監護権の)取り合いになることがあります。
監護者でなかった親が、子どもの学校に待ち伏せして連れ去ったとか、面会交流後に返さなかったといったことが、ありえます。
ただ、実力行使で監護者から子どもを奪うことは、後々親権者としての適格性の点でマイナスになる可能性が高いです。
監護者に子どもの養育を任せられない事情がある場合は、家庭裁判所に「子の監護者の指定・変更」、「子の引渡し」調停又は審判を申し立てることができます。

離婚時に親権者と監護者は分けられる?

一般的には「親権」は分離することなく、子どもと一緒に生活する親が親権者として、どちらも担います。
その方が子どもの利益になると考えられるからです。

ただ、海外勤務で子どもと一緒に生活できないけれど「親権者」でいたい、子どもが幼いので一緒に生活するのは母親がいいが財産管理は父親が適任である、などの場合、離婚時に「親権者」と「監護者」を分けて、子どもと一緒に生活する親を「監護者」とすることはできます。

民法には、協議離婚のときに、子の利益を最も優先して「子の監護をすべき者」を定めると書いてあります。
協議では決められないときは、家庭裁判所が監護者を決めることとされています。

「身上監護権」は、離婚届にも、戸籍にも、記載されません。
そのため、夫婦で話し合って親権者と監護者を分けると決めた場合、合意書を作成することをお勧めします。

離婚時に親権者と監護者を分けるときの注意点

親権者と監護者を分けるのであれば、離婚後も子どものことで協力していける関係であることが必要です。
例えば、子どもが交通事故にあい、裁判になったときの法定代理人は親権者となります。子どもが奨学金の申請をする際にも親権者の同意が必要です。

また、監護者が再婚する際、再婚相手と未成年の子どもが養子縁組するときにも、親権者が子どもの法定代理人として養子縁組届に署名押印することになります。

色々な場面で、親権者の協力が必要なことが出てきます。

多くの場合、離婚するときの夫婦関係は悪化しており、協力は難しいことが多いです。
離婚後に協力関係を保てるか、冷静に考えてみましょう。
離婚の話し合いで、「早く離婚したいから、子どもと一緒に生活できるなら、親権は相手に譲ってもいいか。」と安易に妥協すると、後々大変なことになるかもしれません。

親権の争い

親権者を決める流れ

離婚する前に、どちらが親権者となるか話し合いで決まらないときは、家庭裁判所の「夫婦関係調整調停(離婚)」=「離婚調停」を利用することになります。

調停でも決まらないときは、審判や裁判になり、最終的には裁判所が親権者を決めることになります。その際、父母がお互いに、これまでの学歴や職歴、現在の就労状況、経済状態、健康状態、住環境、教育環境、監護補助者のこと、監護方針、子どもへの愛情、子どもをどのように養育してきたかなどを書いて提出することができます。

また、家庭裁判所調査官が、子どもの環境を調査して、判断材料にします。裁判官は、それらを総合的にみて、子どもの幸福の観点から、判断します。

親権者指定の判断材料

過去の裁判例では、次の要素が親権者指定の判断材料とされました。

・監護の継続性
現在子どもの状況が安定しているのならば、それを維持していくのが良いとして、現在監護している親を親権者とすることが多いです。

・母性優先の原則
子どもが乳幼児の場合には、母性的な存在との関わりが成育過程で不可欠として、母性的役割を持つ親を親権者とすることが多いです。

・子の意思
子どもが15歳以上の場合、家庭裁判所は、子どもの意見を聴かなければならないとされています。また、おおむね10歳前後以上であれば自分の意見を表明できるとされており、判断材料とされます。

・面会交流の許容
夫婦が離婚した後も、子どもが両親双方と交流することは成育過程で重要として、他方の親と子どもとの面会交流を認めるかどうかを親権者としての適格性の判断材料にするようです。

親権者を決めるに当たっては、どの要素が重要視されるか、決まっているわけではありません。裁判官は、ケースバイケースで、総合的に判断します。また、親権者が定められた後も、家庭裁判所が子どもの幸福のために必要であると認めれば、親権者の変更は可能です。(父母の協議だけでは変更できません。)

親権者、監護者の変更

親権者の変更

離婚時にいったん決めた「親権者」を変更するのは簡単ではありません。
必ず家庭裁判所での調停又は審判を申し立てなければなりません。
調停での話し合いで合意できないときは、自動的に審判に移行し、裁判官が判断(審判)することになります。

親権者の変更は、子どもの生育に大きな影響を与えるものなので、慎重に判断されます。
親権者を変更しなければいけない事情や、これまでの養育状況、双方の経済力、子どもの年齢や意向など、子どもの幸せのためにどうした方がいいのか、様々な点が考慮されます。

監護者の変更

一方、「監護者」の変更は親の話し合いだけでできます。
前述したとおり、市区町村への届出もありませんし、戸籍にも記載されません。

監護者変更の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に「子の監護者の指定・変更」の調停又は審判を申し立てることができます。
調停での話し合いがまとまらないときは、自動的に審判に移行し、裁判官が判断(審判)します。
その際は、親権者の変更と同じように、子どもの幸せの観点から慎重に判断されます。

虐待と親権停止

親による虐待から子どもを守るために、2011年5月に民法が一部改正されました。

これまでの民法にも、「親権の喪失」について定めがあり、親が親権を濫用したり品行が著しく悪いときに、家庭裁判所が親権の喪失を宣告することができました。しかし、「親権の喪失」は無期限で、条件も厳しかったため、あまり利用されてきませんでした。

そこで、今回の改正では「親権の喪失」に加えて、「親権停止」が新たに設けられました。「親権停止」は、「父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき」に、家庭裁判所の審判により2年を超えない範囲で親権を停止する期間が定められます。

また、関連して次のような改正もされました。

  • 「親権喪失」の条件に「父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるとき」と明記
  • 「親権喪失」を請求できる人に子ども本人、未成年後見人、未成年後見監督人を加える
    (「親権停止」も、子どもの親族、検察官のほか、子ども本人、未成年後見人、未成年後見監督人が請求できます。)
  • 子どもを「懲戒」できる条件として「子の利益のために子の監護及び教育に必要な範囲内」を明記

なお、未成年後見人とは、親権者がいない(両親が亡くなっている、親権喪失や親権停止中など)ときに家庭裁判所が選任する、未成年者の親代わりとなる者のことです。

まとめ

離婚するときに、子どもの親権でもめることはよくあります。
どの親も、子どもがかわいいと思うのは当然ですし、一緒に生活したいと考えるでしょう。
中には、意地の張り合いで、親権を主張しあうこともあります。

しかし、親権を考える上で一番大切なのは、子どもの幸福です。
親権者=監護者にするにしても、監護者と親権者を分けるにしても、子どもにとって、一番望ましいと考えられる環境を用意できるようにしましょう。

子どもの親権についてお悩みやご不明なことがありましたら、当事務所の弁護士にご相談ください。

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