離婚後の子どもの戸籍、氏(苗字)について
監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 牧野 房江弁護士

目次
はじめに
離婚をした後、子どもの戸籍や氏(姓・苗字)がどうなるのか、ご存知でしょうか。
離婚する際に子どもの親権者を決め、離婚届に記載しますが、離婚届を出しただけでは、子どもの戸籍に移動はありません。
結婚したときに氏が変わった親が、離婚後の子どもの親権者となった場合、離婚届を出すことに加えて、次の手続きをする必要があります。
- 家庭裁判所に子の氏の変更許可の審判申立て
- 家庭裁判所の許可審判書と子どもの入籍届を子どもの本籍地か住所地の役所に提出
結婚・離婚と戸籍の関係、子どもの戸籍のこと、各種手続きについてみていきます。
結婚と戸籍の関係
結婚する際、婚姻届を市区町村役場に提出して、夫婦で新しい戸籍を作ります。
戸籍は、このようなものです。
戸籍は、日本国民について、出生、婚姻(結婚)、離婚、死亡などの身分関係を登録・証明するものです。
戸籍は、一組の夫婦・夫婦と氏が同じ子について作られます。
夫婦のどちらかが筆頭者(戸籍の代表者)になります。
婚姻届では、「婚姻後の夫婦の氏」を「夫の氏」にするか、「妻の氏」にするか、選択するようになっています。
夫婦の氏に選ばれた方が、筆頭者です。
戸籍に入っている家族は、筆頭者の氏(苗字)となるので、筆頭者にならなかった夫または妻は、氏が変わることになります。
例えば、甲山太郎さんと乙川松子さんが結婚して、太郎さんを筆頭者とした場合、松子さんは甲山松子さんとなります。
そして、夫婦に子どもが生まれると、子どもも夫婦の戸籍に入り、筆頭者と同じ氏になります。
離婚と戸籍の関係
結婚する際に夫または妻の氏に変えた方(上記例では、松子さん)は、離婚すると、結婚前の戸籍(両親の戸籍)に戻るか、自分が筆頭者の新しい戸籍を作ることになります。
松子さんは、離婚すると原則として旧姓(上記例では、乙川)に戻りますが、離婚後3ヶ月以内又は離婚届と同時に「離婚の際に称していた氏を称する届」を出すと、離婚前の氏(上記例では、甲山)のままとなります。
その場合、結婚前の戸籍には戻れず、新しい戸籍を作ることになります。
図にすると、次のようになります。
結婚する際に筆頭者になった方(上記例では、太郎さん)は、離婚しても、結婚したときに作った戸籍に入ったままです。
離婚後の子どもの戸籍
両親が離婚しても、原則として子どもは、離婚前の夫婦の戸籍(上記例では、太郎さんが筆頭者の戸籍)に留まります。
氏(苗字)も離婚前のままです。
これは、離婚後の親権者と関係なく、です。
上記例では、松子さんが子どもの親権者であっても、子どもは太郎さんが筆頭者の戸籍に入ったままで、氏は「甲山」ということです。
松子さんが、前述した「離婚の際に称していた氏を称する届」を出して、「甲山松子」であったとしても、一見すると子どもと松子さんは同じ氏(苗字)のようですが、戸籍上は違うということです。
子どもを自分の戸籍に入れる手続き
松子さんが子どもを自分と同じ氏(苗字)にして、自分の戸籍に入れたい場合は、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に子の氏の変更許可の審判申立をして、松子さんの戸籍上の氏に変更する必要があります。
その後、家庭裁判所の許可審判書と入籍届を役所に提出することで、子どもが松子さんと一緒の戸籍に入ることになります。
子の氏の変更許可の審判申立
裁判所に申立てる「申立人」は、子どもの年齢によって違います。
- 子どもが15歳未満の場合は親権者である松子さん
- 子どもが15歳以上の場合は子ども本人
申立てる際は、申立書に必要事項を記入し、800円の収入印紙を貼って、離婚後の子どもの戸籍謄本と松子さんの新しく作った戸籍謄本を添付します(その他、詳しい手続き方法は、申立てる家庭裁判所にお問い合わせください。)。
役所に入籍届提出
そして、家庭裁判所の許可審判書と子どもの入籍届を子どもの本籍地か住所地の市区町村役場に提出します。
届出人は、子どもが15歳未満の場合は親権者である松子さん、15歳以上の場合は子ども本人となります。
届出先が本籍地ではない場合、両親の離婚が記載されている子どもの戸籍謄本・松子さんの新しく作った戸籍謄本が必要です(子どもの本籍地が届出先で、松子さんの本籍地が届出先ではないときは、松子さんの戸籍謄本だけ必要です。)。
なお、子どもが15歳以上になれば、子どもが自分で氏の変更許可の審判を申立てることができます。
また、子どもが成年になったときには、1年以内に市区町村役場に届け出れば、元の氏(苗字)に戻すこともできます。
おわりに
結婚したときに氏が変わった方が、離婚して、子どもの親権者になった場合、子どもは離婚時の戸籍に残ったままなので、注意が必要です。
子どもを自分の戸籍に入れるには、まずは家庭裁判所での「子の氏の変更許可の審判申立」をしましょう。
離婚後の手続きはいろいろあって大変だと思いますが、ひとつひとつ取り組んで解決していきましょう。