債権法改正のポイントを徹底解説(第4回)~債権譲渡、債務引受について~

監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 弁護士

2017年5月に改正法が成立し、一部の規定を除いて2020年4月1日から施行されている債権法の改正について、法定利率と債務不履行責任については「債権法改正のポイントを徹底解説(第1回)~法定利率と債務不履行責任について~」で解説をし、詐害行為取消権については「債権法改正のポイントを徹底解説(第2回)~詐害行為取消権について~」で解説をしました。

また、保証契約については「債権法改正のポイントを徹底解説(第3回)~保証契約について~」で解説を行いました。

第4回目の今回は、債権譲渡と債務引受に関する改正について解説します。今回解説する債権譲渡と債務引受は、保証契約に関する改正と同様、金融機関はもとより一般の事業会社等においても大きな影響のある改正です。

債権譲渡に関する改正

債権は、原則として他人に自由に譲渡することができます。「債権譲渡自由の原則」と呼ばれています(466条第1項)。
もっとも、債権が譲渡されると債務を履行する相手が変わるという点で債務者に影響がありますので、契約当事者間で債権の譲渡を禁止又は制限する特約を付すことができます。これを「譲渡制限特約」といいます(466条第2項)。

今回の改正で、譲渡制限特約に関する事項が大幅に改正され、債権譲渡自由の原則が強化されました。また、譲渡できる債権の範囲が拡大し、改正前よりも債権譲渡を活用しやすくなりました。以下、説明していきます。

譲渡制限特約

譲渡制限特約付き債権の譲渡が有効に(466条第2項)

改正前には、譲渡制限特約が付された債権の譲渡は原則として無効と解釈されていました。
しかし、債権譲渡が無効になる可能性のあることが、中小企業等による債権譲渡を使用した資金調達(債権譲渡担保等を含む)を妨げる要因になっているとの指摘がありました。また、本来、債権譲渡は自由であり、譲渡が制限される場合が例外であることとの整合性にも疑問が持たれていました。

そこで、改正法では、譲渡制限特約が付されている場合でも債権譲渡は有効であると定め、従来の実務上の解釈を変更しました(466条第2項)。

ただし、預貯金債権(金融機関に預貯金口座を開設した人が金融機関に対して有している預貯金の払い戻しを求める権利)に関しては、例外的に譲渡制限について悪意(知っていたこと)又は重過失の譲受人に対して無効の主張ができると定められています(466条の5第1項)。

預貯金債権について譲渡制限特約が付されていることは一般的に知られているため、預貯金債権の譲渡が有効となることは実際上ほとんどないと考えられます。

債務者の保護

このように譲渡制限特約がある債権であってもその譲渡は有効になることから、債権が譲渡されない、つまり、債務を履行する相手が変わらないと思っていた債務者に大きな影響が生じ、そのような債務者を保護する必要があります。

そのため改正法は、債権譲渡を受けた新しい債権者が譲渡制限特約について悪意(知っていた)又は重過失である場合には、債務者は元の債権者(債権譲渡をした人)に対して弁済等をすれば、新しい債権者に対しても弁済等による免責を主張できるとの規定が新たに設けられました(466条第3項)。具体的には、以下のような場合です。

債務者の保護

上記のような場合、譲渡人(元の債権者)Aはもはや債権者ではありませんが、債務者Bは、譲渡人(元の債権者)Aをあたかも債権者であるかのように扱うことができるということです。これにより、譲渡制限特約を付すことによって弁済先が固定されるという債務者の利益を一定程度保護することができます。

異議なき承諾の廃止

債権譲渡の対抗要件の一つであった「異議なき承諾」に関しても、大きな改正がありました。対抗要件とは、債権譲渡を債務者及び第三者に主張するために必要とされる要件です。

債権譲渡における対抗要件としては、債権譲渡をした旨を譲渡人(元の債権者)Aが債務者Bに対して通知する方法がありました。この点は改正による変更はありません(467条第1項)。

異議なき承諾の廃止

これに加え、債権法では債権譲渡の対抗要件として、債務者Bによる債権譲渡の「承諾」が定められています。この「承諾」は、譲渡人(元の債権者)Aに対して行っても、譲受人Cに対して行っても構いません(467条第1項)。

債権法改正前は、この債務者Bによる「承諾」に際して債務者Bが特段の異議をとどめなかった場合(異議なき承諾)には、債権譲渡の通知前から債務者Bが元の債権者Aに対して主張できたこと(弁済等)を新しい債権者である譲受人Cに対して主張できないとされていました。

債権譲渡について異議なき承諾

しかし、債権譲渡を「承諾」しただけで債務者が大きな不利益を受けることに対してはかねてより批判のあったところです。
このため、今回の改正により「異議なき承諾」によってそれまで債務者Bが債権者Aに対して主張できたことが主張できなくなるという制度が廃止されました。これにより、単なる承諾と異議なき承諾といった区別がなくなりました。

改正法では、債権譲渡の通知又は承諾という債権譲渡の対抗要件を備えた時までに、元の債権者(譲渡人)Aに対して債務者Bが主張できたこと(抗弁)は、新しい債権者(譲受人)Cに対しても主張できるように変更されました(468条)。
ただし、債務者Bが個別に抗弁を放棄した場合には、以後その抗弁を主張することはできなくなります。

債権譲渡について承諾

将来債権を含めた債権譲渡自由の原則

改正法は、債権譲渡時点では発生しておらず将来発生する債権についても譲渡が可能であることを明文化しました(466条の6、467条)。将来債権の譲渡とは、例えば、将来発生する予定の報酬請求権を譲渡するものです。

債権法改正前から、判例によって将来債権の譲渡は有効であると認められていました。これが、改正法で明文化されたのです。

債務引受に関する改正

債務引受とは、契約によって債務者の有する債務を引き受けることをいいます。債権譲渡とちょうど反対ということになります。具体的な登場人物は以下の通りです。

債権者,債務者,引受人

債権法改正前は、債務引受に関する条文はありませんでしたが、実務上は一般的に行われていました。今回の改正により、これまで蓄積されてきた債務引受に関する判例法理が明文化されました。

併存的債務引受

債務引受は、債権法改正前から「併存的債務引受」と「免責的債務引受」という分類がありました。
このうち、「併存的債務引受」とは、債務者Bが有する債務はそのまま残しながら、新たに債務を引き受ける人(引受人)Cが同一内容の債務を債務者Bと連帯して負担するというものです(470条第1項)。つまり、その債務を負担する人が増えることとなります。

併存的債務引受

併存的債務引受をするためには、以下のいずれかの方法で契約をする必要があります。

① 債権者Aと引受人Cの二者間での契約(470条第2項)
② 債務者Bと引受人Cの二者間での契約及び債権者Aの引受人Cに対する承諾(470条第3項、第4項、537条第3項)

併存的債務引受の場合、債務者Bにとっては、自分と同じ債務を負担してくれる人(引受人C)が増えることになりますので、利益になるだけで不利益にはなりません。そのため、①債務者Bの承諾等は必要なく、債権者Aと引受人Cとの二者間で契約を有効に締結することができます。

また、債権者Aにとっては、債務者Bに加えて債務を負担する人(引受人C)が増えるので、債権の回収可能性が高くなるという利益があります。そのため、②債務者Bと引受人Cとの二者間で契約を締結し、そのあとに、債権者Aが承諾をすれば十分ということになります。

このほか、債権者A・債務者B・引受人Cの三者間の契約でも併存的債務引受が可能であると考えられています。

免責的債務引受

「免責的債務引受」とは、引受人Cが債務者Bの有していた債務を引き受ける代わりに、債務者Bが免責されるというものです(472条第1項)。つまり、債務を負担する人が変更になります。

免責的債務引受

免責的債務引受をするためには、以下のいずれかの方法で契約をする必要があります。

① 債権者Aと引受人Cの二者間での契約及び債権者Aから債務者Bへの通知(472条第2項)
② 債務者Bと引受人Cの二者間での契約及び債権者Aから引受人Cへの承諾(472条第3項)

免責的債務引受の場合、債務を履行する人が変更されますので、債権の回収可能性に変化が生じる点で債権者Aに多大な影響があります。これに対し、債務者Bとしては債務が免責されますので、利益のみ享受することになります。

そのため、①免責的債務引受によって多大な影響を受ける債権者Aと引受人Cとの二者間で契約をし、債権者Aから、利益のみ享受する債務者Bへ通知することによって有効に免責的債務引受を行うことができます。

また、②債務者Bと引受人Cとの二者間での契約の場合には、債務を履行する者が変わることによって多大な影響を受ける債権者Aが承諾しなければ、免責的債務引受は有効になりません。

このほか、併存的債務引受と同様に、債権者A・債務者B・引受人Cの三者間の契約で免責的債務引受を行うことができます。

併存的債務引受と免責的債務引受のそれぞれで、三者にどのような影響がどの程度あるかをまとめると、下記の通りになります。

債権者A 債務者B 引受人C
併存的債務引受 影響あり
(プラス)
ほぼ影響なし
(若干プラス)
多大な影響
(マイナス)
免責的債務引受 多大な影響あり
(プラスの場合もマイナスの場合も)
多大な影響あり
(プラス)
多大な影響
(マイナス)

各自が受ける影響の内容を踏まえた上で、契約の有効要件が定められていることが理解できると思います。

まとめ

債権譲渡や債務引受は三者間で問題になるため、法律関係が複雑になります。不安な点がありましたらお早めに弁護士にご相談ください。

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