自己破産の流れ、メリットとデメリット

監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 弁護士

自己破産の流れ、メリットとデメリット

自己破産とは

破産とは

自己破産は、収入や財産に対して借金が多すぎて、返済することができなくなった場合に、債務者が裁判所に申立て、裁判所が債務超過であることを決定し、その後、免責許可の決定が確定すると、残っている借金を返さなくてよくなる手続きです。
ただし、税金、社会保険料、養育費、罰金、悪意の不法行為に基づく損害賠償債務、かくしておいた借金などは免責されません。

自己破産手続には、「管財型」と「同時廃止型」の2種類あります。

「管財型」の場合、破産管財人が選ばれ、債務者に財産があればそれをお金に換えて、債権者に公平に分配(配当)することになります。
債務者に財産がなければ、配当はなく、破産手続き廃止(終了)となります。

「管財型」には、「少額管財事件」と「特定管財(通常管財)事件」があります。

多くの場合、「少額管財事件」となりますが、債権者数が膨大な場合など、複雑で困難な管財業務が予想されるときは、「特定管財(通常管財)事件」となります。

管財型」になるのは、主に次の場合です。

  • 一定以上の財産を持っている
  • 財産について調査する必要がある
  • 借金を負った理由について調査する必要がある
  • 会社の代表者

それ以外の場合、破産管財人は選ばれず、財産をお金に換える手続きをしない、「同時廃止事件」となります。
(破産開始決定と同時に廃止(終了)決定がでるので、同時廃止事件と呼ばれます。)

自己破産手続(同時廃止事件)の流れ

当事務所で自己破産手続(同時廃止事件)をお引き受けしたときの流れです。

準備が順調に進めば、4、5か月で終了します。

  1. 受任通知発送
    弁護士から債権者宛に自己破産手続を受任したことを通知します。
    債権者からの取り立てが止まります。
  2. 取引履歴の開示
    債権者から借金の貸し借りの履歴(取引履歴)が届きます。
    必要に応じて、利息制限法所定の利息で引き直し計算をし、過払い金の有無を確認します。過払い金がある場合は、債権者に請求します。
  3. 申立書・添付書類などの準備
    当事務所から、裁判所に提出する書類の準備をお願いします。
  4. 裁判所に申立て
    ご用意いただいた書類を整え、裁判所に申立書・添付書類等を提出します。
  5. 審尋
    弁護士と一緒に裁判所で裁判官との面接をしていただきます(面接がない場合もあります)。
  6. 破産手続開始・廃止決定
    一定以上の財産がないので破産手続開始と同時に手続を終了とする決定が出ます。
  7. 免責許可決定
    債権者からの意見も考慮して、免責が相当だと判断されると、破産手続開始・廃止決定後約2か月で免責許可決定が出ます。
  8. 免責許可決定確定
    免責許可決定が官報に載ってから2週間以内に不服申立てがなければ、免責許可決定が確定し、借金(税金等以外)を返さなくてよくなります。

自己破産手続(少額管財事件)の流れ

当事務所で自己破産手続(少額管財事件)をお引き受けしたときの流れです。

受任から免責許可決定確定までにかかる時間は、事案によって異なりますが、債権者への配当がない場合、順調に進んで5、6か月くらいです。

※1~4は、同時廃止手続の流れと同じです。

  1. 破産手続開始決定
    破産管財人の選任と債権者集会の期日の指定もされます。
  2. 破産管財人との打ち合わせ
    破産管財人に財産の引継ぎや事案の補足説明をします。破産管財人の調査に協力し、指示には必ず従いましょう。
  3. 債権者集会
    弁護士と一緒に裁判所で行われる債権者集会に出席していただきます。
    債権者集会では、破産管財人が収支や財産についての報告します。債権者の出席は任意なので、出席しないことが多いです。
    配当がなければ、通常1回だけで終わりますが、破産管財人の業務が終了するまで、複数回行われることもあります。
  4. 免責審尋
    債権者集会で免責に関する審尋が行われます。
  5. 破産手続廃止決定
    破産管財人の業務が終了すると、手続を終了とする決定が出ます。
  6. 免責許可決定
    破産管財人の報告や債権者の意見を考慮し、免責が相当と判断されると、免責許可決定が出ます。なお、債務者が会社などの法人の場合、破産によって法人自体がなくなってしまうので、免責許可という手続きはありません。
  7. 免責許可決定確定
    免責許可決定が官報に載ってから2週間以内に不服申立てがなければ、免責許可決定が確定し、借金(税金等以外)を返さなくてよくなります。

免責不許可事由とは

免責不許可事由

誰でもかれでも免責許可決定が出るわけではありません。

裁判所は、

  • 「免責不許可事由」がない場合
  • 「免責不許可事由」があっても、一切の事情を考慮して、免責を許可することが相当であると認めるとき

免責許可決定をします。

免責不許可事由」は、

  • クレジットカードで買った商品を、安い値段で売った
  • 一部の債権者にだけ返済した
  • 借金が多額で返すあてがないのに、嘘をついて借金した
  • 浪費やギャンブル(パチンコ、競馬、宝くじなど)、投資等で借金した
  • 7年以内に免責許可決定を受けている
  • 破産申立て前に財産を隠した
  • 破産申立書等に嘘を書いた

などです。

財産が少なく、同時廃止事件で申立てても、「免責不許可事由」があると、少額管財事件になることがあります。

自己破産のメリット・デメリット

破産のメリットデメリット

借金のご相談にいらした方で、「自己破産だけは避けたいです。」とおっしゃる方は少なからずいらっしゃいます。
「自己破産」に対する悪いイメージをお持ちのようです。

確かに、一定額以上の財産は手放すことになりますし、一定期間あらたな借入れができなくなるなどのデメリットはあります。

しかし、財産のすべてを手放すわけではありませんし、戸籍や住民票に破産したことが載るわけではありません。

債権者と返済方法の見直しをする債務整理や、借金を減額してもらって3~5年かけて返済する小規模個人再生手続きという方法もありますが、自己破産のメリット・デメリットをよく検討したうえで判断してもらいたいと思います。

メリット

  • 免責許可決定が確定すれば、借金(税金等以外)を返さなくてよくなる
    これは、自己破産の最大のメリットと言えるでしょう。
    ただし、免責不許可事由がある場合は、注意が必要です。
  • 破産手続開始すると、差押え手続きを止められる
    債権者が差押え手続きをしてきても、破産手続開始決定が出ると手続きがストップします。

デメリット

  • 家や車、解約返戻金が一定以上の生命保険など、財産を手放すことになる
  • いわゆるブラックリストに載り、各金融機関が定める期間、あらたに借金やクレジットカード作成ができなくなる
  • 保証人がいる場合、保証人に借金の請求がいってしまう
  • 官報(国が発行している新聞)に載る
  • 管財型の場合、破産管財人に郵便物が転送される
  • 管財型の場合、破産手続中、裁判所の許可なく転居や長期旅行ができなくなる
  • 破産手続開始から免責許可決定確定まで、弁護士、司法書士、税理士、宅地建物取引士、保険外交員、警備員など働けない仕事がある(各就業先の判断によっては、免責許可決定確定後も就業できない場合もあります)

これは大丈夫

  • 財産すべてを手放すわけではない
    生活する上で必要な家具・家電、一定未満の財産などはそのまま保有していられます。
    また、破産手続開始後に得られた財産も自由に使えます。
  • 家族名義の財産はそのまま保有していい
    例えば父親名義の家に住んでいても、自分の借金の担保になっていなければ、父親名義の家を処分する必要はありません。
  • 戸籍や住民票には破産申立てしたことは載らない
    官報も一般の方が目にする機会はほとんどないので、職場や近所の方に知られる心配はありません。
    (債権者には裁判所から通知があるので、職場や近所の方が債権者の場合、知られてしまいます。また、破産手続開始により仕事ができなくなる職業の方は、職場に報告することになります。)
  • 借金の総額が少額でも申立てできる
    破産開始は、借金の金額ではなく、借金の返済ができなくなったことが原因となります。

弁護士に頼むメリット

弁護士に頼むメリット

自己破産申立ては、弁護士や司法書士に頼まなくてもできます。
裁判所のホームページに書式や添付書類の説明があります。

しかし、債権者から取引履歴をもらったり、裁判所に提出する書類を整えたり、一人で裁判官との面接を受けたり(面接がない場合もあります)、負担に感じることが多いと思います。

また、弁護士が受任通知を出せば債権者からの取り立てはストップしますが、ご自身では自己破産申立てまで取り立ての連絡が来ることが多いです。

それらの点を考慮すると、お金はかかりますが、弁護士に頼んだ方が安心だと思います。

借金、自己破産について、不安なことやわからないことがあるときは、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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