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どこの裁判所に申立書・訴状を出す? ~管轄のはなし~

はじめに

「管轄(かんかつ)」という言葉をご存知でしょうか?
今回は、裁判所の手続きをするときに避けては通れない「管轄」についてお話します。

管轄裁判所は、その事件について、取り扱うことができる裁判所のことです。
調停・審判・訴訟などの裁判所で行われる手続きには、すべて「管轄裁判所」が法律で決まっています。
自分の家の最寄りの裁判所で手続きができるとは限らないのです。
 

裁判所の種類

まずは、裁判所の種類から確認しましょう。

日本の司法の最高機関は、最高裁判所で、東京にあります。

その下に、高等裁判所があります。
東京・大阪・名古屋・広島・福岡・仙台・札幌・高松の8か所の本庁と、金沢・岡山・松江・宮崎・那覇・秋田の6か所の支部があります。
また、東京高等裁判所の「特別の支部」として、知的財産高等裁判所があります。

高等裁判所の下には、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所があります。
地方裁判所は50か所の本庁と、203か所の支部からなり、家庭裁判所はそれに加えて77か所の出張所があります。
簡易裁判所は438か所で、本庁・支部の区別はありません。

私たちがまず最初に関わる裁判所は、地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所のいずれかになります。
 

家庭裁判所で扱う事件

家庭に関するもめごとや人の身分に関する問題(家事事件)については、家庭裁判所が扱います。
 

<家事審判>

家庭裁判所で扱う審判事件は、個々の事件ごとに法律で決められた住所地を管轄する家庭裁判所で行われます。
例えば、

  • 相続の放棄の申述は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 後見開始は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 養子縁組許可は、養子となる方の住所地を管轄する家庭裁判所

と決まっています。
審判申立書は、事件ごとに決められた家庭裁判所に提出しましょう。
 

<家事調停>

一方、調停事件は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所が管轄裁判所となります。なお、当事者の合意で管轄裁判所を決める場合は、管轄合意書が必要になります。
相手方が複数人いる場合は、それぞれの住所地の家庭裁判所が管轄裁判所になるので、その中の好きな場所の家庭裁判所を選んで申立てることができます。

また、管轄裁判所での審判・調停が難しい場合、その理由を記載した「自庁処理の上申」を提出すると、希望の家庭裁判所で審判・調停を行うことができる可能性があります。
例えば、東京に住む夫がすでに妻の住所地を管轄する千葉家庭裁判所に離婚調停を申立てていて、後から妻が婚姻費用分担請求調停を申立てるとき、関連事件として千葉家庭裁判所での処理が認められる場合があります。
 

<人事訴訟>

人事訴訟(夫婦や親子等の関係についての訴訟)の管轄は、原告または被告の住所地を管轄する家庭裁判所です。
調停とは違って、当事者の合意で管轄は決められません。
訴訟の前に調停を行った場合、「特に必要があると認められるとき」に、「自庁処理の上申」をして、調停を行った家庭裁判所での訴訟が認められることがあります。
ただ、調停が出張所で行われた場合、訴訟を出張所で行うことができないので、本庁か支部で行うことになります。

例えば、家事審判・調停の管轄裁判所が、当事務所がある船橋市を管轄する家庭裁判所の場合、千葉家庭裁判所市川出張所が管轄裁判所になります。
調停が不成立で終了し、訴訟に移行したとき、人事訴訟の管轄裁判所は、本庁の千葉家庭裁判所になります。
当事務所の最寄り駅であるJR津田沼駅がある習志野市を管轄する家庭裁判所は千葉家庭裁判所で、家事審判・調停も、人事訴訟も、千葉家庭裁判所が管轄裁判所になります。

また、「婚姻の取消し」と「離婚」の訴訟で、当事者間に未成年の子どもがいる場合は、管轄を決める際にその子どもの住所または居所を考慮しなければならないと法律で決まっています。

損害賠償請求は、本来地方裁判所や簡易裁判所に提訴するものですが、離婚請求と一緒に慰謝料請求(損害賠償請求)をする場合は、家庭裁判所が扱うことになります。(離婚成立後に慰謝料のみ請求する場合は、地方裁判所・簡易裁判所が管轄です。)

離婚訴訟などに伴って仮差押命令申立などの保全命令を申立てる場合も、家庭裁判所に管轄があります。
 

地方裁判所・簡易裁判所で扱う事件

家事事件以外の裁判所の手続きは、地方裁判所・簡易裁判所で扱います。
 

<民事訴訟>

訴訟については、訴訟物の価額(原告が求めている判決で原告が受けられる利益を経済的に表したもの)によって、簡易裁判所か地方裁判所か分かれます(事物管轄)。
なお、金銭請求の場合、利息や遅延損害金は訴訟物の価額に入りません。
訴訟物の価額が140万円以下だと、簡易裁判所です。
       140万円を超えると、地方裁判所です。

ただし、例外があります。
行政訴訟は地方裁判所で扱います。
また、不動産に関する訴訟、事案が複雑など相当と認められる訴訟の場合は、訴訟物の価額が140万円以下だとしても、地方裁判所で扱うことができます。

これで、簡易裁判所か地方裁判所か決まりました。
では、どこの裁判所が管轄になるのでしょうか(土地管轄)。
原則は、被告の住所地です。
訴えの種類によっては、原則に加えて、特別裁判籍に管轄が生じます。
例えば、

  • 財産権上の訴えは、義務履行地(支払すべき場所)
  • 不動産に関する訴えは、不動産の所在地
  • 不法行為に関する訴えは、不法行為があった場所

また、特許権等に関する訴えは、東日本が東京地方裁判所、西日本は大阪地方裁判所が専属管轄となっています。

ほかにも、合意管轄(当事者間の合意で管轄裁判所を書面で決めること)、応訴管轄(原告が管轄のない裁判所に訴えを提起して被告が異議なく受けたときに、管轄が生じること)があります。
合意管轄には専属的合意と付加的合意があり、「千葉地方裁判所を専属的管轄裁判所とする」との合意書があれば、千葉地方裁判所でのみ訴訟提起ができ、専属的合意がなければ、法定の管轄裁判所にも訴訟提起ができます。
 
では、具体的にみていきましょう。

  1. 貸金請求
    金銭消費貸借契約書等に専属的管轄裁判所の記載があれば、その裁判所です。

    専属的管轄裁判所の合意がない場合、請求金額が140万円以下かどうかで、簡易裁判所か地方裁判所かが決まります。

    • 原則である、被告の住所地
    • 債務の弁済は、債権者の住所地に持参して弁済することが原則なので、義務履行地である、原告の住所地
    • のいずれかから選べます。

  2. 建物明渡し請求
    建物の賃貸借契約書等に専属的管轄裁判所の記載があれば、その裁判所です。

    専属的管轄裁判所の合意がない場合、請求金額が140万円以下かどうかで、簡易裁判所か地方裁判所かが決まりますが、不動産に関する訴訟なので、地方裁判所で行われるのが一般的です。

    • 原則である、被告の住所地
    • 不動産に関する訴えなので、建物の所在地
    • 同時に未払い賃料等の請求をしているときは、債務の弁済の義務履行地である、原告の住所地
    • のいずれかから選べます。

        

  3. 交通事故による損害賠償請求
    請求金額が140万円以下かどうかで、簡易裁判所か地方裁判所かが決まります。

    • 原則である、被告の住所地
    • 不法行為に関する訴えなので、交通事故の場所
    • 損害賠償金支払いの義務履行地である、原告の住所地
    • のいずれかから選べます。

以上のように、金銭請求を伴う訴訟の場合、義務履行地である原告の住所地の裁判所に管轄が生ずるので、原則である被告の住所地よりも、原告の住所地の裁判所に訴訟を提起することが多いです。
 

<民事調停>

民事調停は、内容によって、民事一般調停・宅地建物調停・農事調停・商事調停・鉱害調停・交通調停・公害等調停・特定調停の8種類に分けられます。
原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所が管轄裁判所となりますが、調停の種類によって、原則どおりでなかったり、合意管轄が認められたり、特別な定めがあったりしますので、ご注意ください。
 

移送

訴状などが提出された裁判所から、ほかの管轄裁判所に事件が移されることがあります。
移送と呼ばれており、裁判所の職権または当事者の申立てにより行われます。
移送される主な理由は次のとおりです。

  • 管轄違い
    管轄のきまりと違う裁判所に訴訟提起された場合
  • 遅滞を避けるため
    複数の管轄がある中で、原告が選んだ管轄裁判所では、訴訟の進行が著しく遅延したり、被告に不利になることが考えられる場合
  • 簡易裁判所から地方裁判所へ
    当事者が地方裁判所への移送を申立て相手方が同意した場合や、不動産に関する訴訟で被告が地方裁判所への移送を申し立てた場合など

 

さいごに

調停は、相手方の住所地を管轄する裁判所が管轄裁判所になります。
これは、相手方の都合の悪い場所で裁判手続きが行われて、相手方が手続きに参加できなくなることを避けるためです。
訴訟手続きでも、被告に不利になることが考えられる場合などに移送の申立てができます。
調停や訴訟の管轄の話は地味ではありますが、裁判手続きの公平性のために大切なきまりなのですね。

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