裁判には勝ったのに・・・相手が支払ってくれないとき

監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 弁護士

裁判には勝ったのに・・・

裁判には勝ったのに

貸金請求や損害賠償請求、敷金返還請求などの裁判をして、相手に請求どおりの金額を支払えと命じる判決が出れば、こちらの「勝ち」です。
しかし、ここで喜ぶのは時期尚早かもしれません。
相手が判決どおりにお金を支払ってくれて、やっと一件落着です。

ところで、判決どおりにお金を支払ってくれない相手に対し、裁判所が注意をすることはありませんし(家庭裁判所の調停や審判で決まったことであれば、「履行勧告」という制度を使うことができます。)、罰金のようなものが科されることもありません(利息がつくことはあります。)。

無い袖は振れませんので、せっかく裁判で勝っても、お金を支払ってもらえないことはありえます。
そのため、手間や費用をかけて裁判を起こす前に、相手に支払い能力(収入や財産)があるかを確認した方が良いでしょう。

なお、相手の親が資産家だとしても、相手が年少者であったり、相手の親が連帯保証人など、あなたにお金を支払う義務を負っている場合でなければ、相手の親に代わりに支払ってもらうよう請求することはできません。

相手に収入や財産があったら・・・

相手に収入や財産があったら

もし、相手に収入や財産(不動産や預貯金、有価証券、債権など)があるのに支払ってくれないときは、相手に支払いを命じる判決(債務名義)に基づいて、強制執行(差し押さえ等)という手続をとることができます。

強制執行とは・・・

強制執行は、相手が判決や裁判上の和解内容どおりに約束を守らない場合に、確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、和解調書、調停調書、執行証書などの債務名義を持っている債権者の申立てに基づいて、裁判所が強制的に債権者の権利を実現させる手続です。

「債権者の権利」には、「お金の支払いを受ける権利」のほかにも、「建物を明渡してもらう権利」や「通行妨害を禁止する権利」などがありますが、今回は「お金の支払い」=「金銭執行」についてお話いたします。

金銭執行にもいろいろある

金銭執行は、相手から直接お金の支払いを受ける代わりに、相手の収入や財産から債権を回収する手続です。

差し押さえる財産によって、不動産執行・債権執行・動産執行などに分けられます。

  • 不動産執行
     相手が所有している不動産を差し押さえ、競売手続によって売却し、その代金を債権回収に充てる。
  • 債権執行
     相手の債権(相手が勤務先から給料を受け取る権利・銀行から預金を払い戻す権利・賃借人から家賃を受け取る権利など)を差し押さえ、第三債務者(勤務先や銀行、賃借人など)から取り立てて、債権回収に充てる。
  • 動産執行
     相手が所有している家財道具・貴金属・商品などを差し押さえ、売却し、その代金を債権回収に充てる。

不動産執行では、買手がつかないと売却できず債権回収できません。
また、抵当権などがついていて回収できるお金がない場合は、強制競売の手続を取消されてしまい、申立費用が無駄になりますし、回収金が少ない場合は、費用倒れになるので、注意が必要です。

また、給料の差押えは、原則として相手の給料の4分の1(但し、月給で44万円を超える場合は33万円を超える部分)しか差し押さえることができません(養育費等による差押えの場合は、特例があります)。
債務名義に記載された金額になるまで、相手の勤務先から所定の金額を毎月回収することになります。
年金や公的扶助などは全額差押え禁止です。

相手の収入や財産を事前に調査・検討して、一番確実にお金を回収できる方法を選びましょう。

不動産執行と債権執行で、債務名義に記載された金額を割り振り、同時に申し立てることもできますし、債務名義に記載された金額が回収できるまで何度でも申し立てることができます。

手続には手間も費用もかかりますが、自力での回収は認められていないので、仕方がありません。
具体的な手続き方法は、裁判所のホームページに掲載されています。

仮差押え

相手が財産を隠すなどして、相手に支払いを命じる判決が出て強制執行手続をしようとしても、債権回収できないおそれがあるときは、仮差押えという手続をとることがあります。
その名のとおり相手の財産を仮に差し押さえる手続です。

例えば、相手が不動産を所有していたので、お金を支払ってくれないときは不動産執行すれば良いと考えて裁判を起こしたが、判決が出て、いざ不動産執行しようと不動産登記事項証明書を見ると、所有権移転登記がされていた・・・。
相手には多額の定期預金があると知っていて、それを当てに債権執行したが、定期預金は解約されていた・・・。
そのような事態になるのを防ぐために、裁判を起こす前に仮差押えをすることがあります。

判決が出る前に相手の財産を仮に差し押さえるため、相手に不利益が生じるおそれがあるので、多くの場合申立てには担保(保証金)が必要になります。

相手の財産を調べる方法

相手の財産を調べる方法

裁判で勝って、相手に支払いを命じる判決(債務名義)が手元にある場合、一定の条件を満たしていれば、相手の財産を調べる裁判所での手続き「財産開示制度」「第三者からの情報取得制度」を利用することができます。

財産開示手続

相手に指定された期限までに財産目録を提出させ、裁判所に呼び出して財産について説明させる手続きです。

相手が指定された日に裁判所に出頭しなかった場合、手続きは終了します。

相手が正当な理由なく裁判所に出頭しないときや嘘をついたときなどは、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されるとされています。

財産開示手続きを利用できるのは、強制執行できる条件を満たしていて、次のどちらかに当てはまる場合です。

  • 6か月以内に、強制執行や担保権の実行による配当等の手続きで、債務名義に記載された金額の全額を得ることができなかった
  • できる限りの財産の調査をしたけれど、判明した財産に対して強制執行等をしても債務名義に記載された金額の残額を得ることができないと、不動産登記事項証明書や不動産評価書、財産調査報告書等により明らかにした

なお、3年以内にすでに相手が財産開示手続きで財産について説明していたときは、財産開示手続きは実施されません。
手続きを利用する際の費用は、申立書に貼る印紙が相手1名につき2000円と、裁判所が連絡用に使用する切手6000円程度です。

第三者からの情報取得手続

裁判所が、登記所や市町村等、銀行等の第三者に対して、相手の不動産に関する情報や給与(勤務先)関係の情報、預貯金等に関する情報を提供するように命ずる手続きです。

給与(勤務先)関係の情報については、養育費や婚姻費用、人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権に関する執行力のある債務名義を持っている人のみが利用できます。

第三者からの情報取得手続きを利用できるのは、強制執行できる条件を満たしていて、次のどちらかに当てはまる場合です。

  • 6か月前から今までに、強制執行や担保権の実行による配当等の手続きで、債務名義に記載された金額の全額を得ることができなかった
  • できる限りの財産の調査をしたけれど、判明した財産に対して強制執行等をしても債務名義に記載された金額の残額を得ることができないと、不動産登記事項証明書や不動産評価書、財産調査報告書等により明らかにした

さらに、不動産に関する情報や給与(勤務先)に関する情報を取得したいときは、3年以内に財産開示手続きで相手が財産について説明したことが必要です。
手続きを利用する際の費用は、申立書に貼る印紙が相手1名につき1000円、裁判所にあらかじめ納める5000~円(情報を取得したい第三者の種類や数によって変わります。)です。

最後に

以上のように、相手にお金を請求する際には、回収するところまで見越す必要があります。

弁護士は、依頼者の事件を解決するために、市町村に職務上請求して相手の戸籍や住民票を請求したり、弁護士会照会制度を利用して金融機関に預貯金の照会をするなどできます。

お金を請求するだけならば弁護士に頼まなくてもできますが、その後の交渉や裁判所での手続のことを考えると、まずは専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

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