約40年ぶりの相続法改正!改正法の内容を徹底解説(第4回)~遺留分制度、特別寄与料、持戻し免除の意思表示の推定規定について~

監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 弁護士

約40年ぶりに大きな改正が行われた相続法について、改正の背景についてはすでに当事務所のコラム「約40年ぶりの相続法改正!改正法の内容を徹底解説(第1回)~改正の背景について~ 」で解説をしました。

また、改正の内容については、自筆証書遺言制度の見直しと配偶者居住権制度の創設については「約40年ぶりの相続法改正!改正法の内容を徹底解説(第2回)~自筆証書遺言制度、配偶者居住権制度について~ 」で解説を行いました。さらに、遺産分割制度と相続の効力等については「約40年ぶりの相続法改正!改正法の内容を徹底解説(第3回)~遺産分割制度、相続の効力等について~」で解説をしました。

今回は最終回として、遺留分制度に関する見直し、相続人以外の者の貢献を考慮する特別寄与料の創設、夫婦間の不動産贈与における持戻し免除の意思表示の推定規定の創設について解説します。

遺留分制度に関する見直し

遺留分とは、亡くなった人の意思にかかわらず一定の相続財産の分配を相続人に保障する制度です。例えば、亡くなった人が遺言で、全財産を相続人以外の人に贈与するとした場合でも、相続人が遺留分に関する権利を行使すれば被相続人の遺産の一部を取得することができます。

相続法改正前は、この相続人による遺留分に関する権利行使を遺留分減殺請求といいました。遺留分減殺請求権の行使は、相続の対象となる不動産や有価証券等に関する遺産分割自体をストップさせる効力がありました。遺留分減殺請求権がこのような強力な効果を持つが故に、相続争いが長期化しやすいとの指摘もあったところです。

改正法では、従前の遺留分減殺請求権が「遺留分侵害額請求権」という金銭債権に変更されました。この結果、相続人によって遺留分侵害額請求権が行使されたとしても遺産分割手続自体には影響を生じず、権利行使をした相続人に対しては金銭の支払いのみがなされることになります。つまり、今回の改正によって、相続争いが長期化する要因の1つが解消されたということです。

相続人以外の者の貢献を考慮する特別寄与料の創設

従前の相続法では、亡くなった人の子どもの配偶者(長男の妻など)が献身的な介護や被相続人の事業拡大に貢献していたとしても、相続人ではないとの理由により遺言書がない限り遺産の分配を受けることができませんでした。

このような不公平を解消して相続人以外の親族の貢献に報いるため、今回の改正法において、相続人以外の親族が、亡くなった人に対して生前に無償で介護等を行い、これにより被相続人の財産の維持・増加に特別に寄与したといえる場合には、介護等を行った親族は相続人に対して寄与度に応じた金銭の支払いを求めることができるとの制度が新設されました。この寄与度に応じた金銭を特別寄与料といいます。

特別寄与料の請求は遺産分割手続とは別に行われます。特別寄与料の請求にあたっては、相続人との協議によって決定することもできますが、協議が調わない場合や協議をすることができない場合には、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。

注意すべき点として、特別寄与料には請求の期間が定められています。具体的には、請求者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月又は相続開始から1年のいずれか短い期間内しか請求できません。特別寄与料の請求を検討している場合には、できるだけ早めに準備をすることが大切です。

夫婦間の不動産贈与における持戻し免除の意思表示の推定規定の創設

遺産分割においてよく問題になるテーマとして特別受益があります。特別受益とは、亡くなった人から生前に結婚や生活などのために贈与を受けていたり、遺言により贈与を受けたという場合における、贈与された財産のことをいいます。

特別受益は、遺産の前倒しとみることができるため、贈与を受けた財産に相当する分について贈与を受けた相続人の相続分から減らす調整が行われます。これを、特別受益の持戻しといいます。しかし、夫婦間の自宅の贈与について特別受益として持戻しがされると、亡くなった人が、残される配偶者の将来の生活のために自宅を贈与する行為が無意味となってしまう問題がありました。

そこで、改正法は、20年以上の結婚期間がある夫婦の間で自宅の生前贈与や遺言による贈与がされた場合には、遺産分割において特別受益の持戻しをする必要がないこととなりました。今回の改正によって、残された配偶者の生活の安定がより一層図られたといえます。

まとめ

これで、今回の相続法改正についての解説は終わりました。全部で4回に分けて解説することが必要になるほど、多くの規定が新設されたり変更されたりしました。特に残された配偶者の方は、配偶者居住権など新しい権利が創設されていますので、大きな変化があったといえます。

今回の改正は社会情勢に法律を合わせるために行われた改正ですので、その内容を知っておくことはみなさんにとってとても大事になります。ご自身が亡くなったときに備えてこれから遺言書を作成なさりたい方や、今後のご家族の相続について不安や疑問をお持ちの方はもちろんのこと、すでに遺言書を作成している方にも、今回の相続法の改正は関係してきます。相続に関してご不安がある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

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