相続手続きのために死亡から出生まで戸籍をさかのぼる方法

監修:牧野法律事務所(千葉県弁護士会)
代表 弁護士

親族表

はじめに

はじめに

身近な方が亡くなって、相続の手続きをするにあたって、必ず必要になるのが、戸籍です。
亡くなった方の相続人を確認するためには、亡くなった方が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍を集める必要があります。
また、銀行での相続手続きや不動産の相続登記手続きでも戸籍が必要です。

「相続手続きで必要な戸籍を集める方法」では、戸籍のことや、戸籍を請求する方法をみていきました。

今回は、相続の手続きのために、
・亡くなった方の現在の戸籍から出生当時の戸籍までさかのぼる方法
・相続人の方の現在戸籍から亡くなった方の戸籍までたどる方法
をみていきたいと思います。

亡くなった方の現在の戸籍からさかのぼる

亡くなった方の本籍地がおわかりでしたら、そこの市区町村役場で、「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が欲しいです。」とお願いしましょう。
郵送申請される際は、請求書に添え書きしましょう。

亡くなった方の本籍地がわからないときは、亡くなった方の最後の住所地のある市区町村役場で「本籍地の記載のある住民票」を取得して、確認しましょう。

これですべての戸籍がそろえば良いのですが、たいていは途中までしかそろいません。
次はどの戸籍を取ればいいのか・・・
また、取寄せた戸籍がつながっているか確認する方法を、戸籍のサンプルを見ながら考えていきましょう。
(この戸籍のサンプルは創作です。)

死亡~コンピューター化

では、亡くなった甲山松子さんの戸籍をさかのぼっていきましょう。

こちらが一番新しい戸籍です。
A4縦の用紙に横書きで記載されている、コンピューター化された後の戸籍です。

NEW平成6年式戸籍(1枚目)
平成6年式戸籍(2枚目)

この戸籍の「戸籍事項」を見ると、
平成9年3月1日にこの戸籍が作られたことがわかります。

次に、「戸籍に記録されている者」を見ていきましょう。

筆頭者の甲山太郎さんが除籍になっていることがわかります。
「除籍」は、この戸籍から除かれたことを意味します。
ただ、身分事項が省略されているので、なぜ「除籍」になったのか、詳しくは改製原戸籍を見ないとわかりません。

甲山松子さんの身分事項を見ると、
昭和10年3月3日に生まれて、
昭和30年6月1日に婚姻(結婚)して、「従前戸籍」から太郎さんとの戸籍に入り、
平成30年1月31日に亡くなったことがわかります。

そして、甲山太郎さんと松子さんの間には、
婚姻して除籍になった梅子さんと、
長男さんというお子さんがいることがわかります。

さて、次に取るべき戸籍は?
松子さんの従前戸籍(本籍:松戸市岩瀬1番地、筆頭者:乙川五郎)と、
この戸籍が作られた日(平成9年3月1日)以前の戸籍、つまりこの戸籍の「改製原戸籍」を取ります。
「改正原戸籍(かいせいげんこせき、または、かいせいはらこせき)」は、法改正によって新しい様式に書き換える(改正される)前の、元になる戸籍のことを言います。

コンピューター化~転籍

コンピューター化される前の、改製原戸籍を見てみましょう。
コンピューター化される前の戸籍は、A4横の用紙に縦書きで記載されています。

NEW昭和23年式戸籍1枚目NEW昭和23年式戸籍2枚目

冒頭に「改製につき平成9年3月1日消除」とあります。
一方、先ほどの戸籍は、平成9年3月1日に作られたものでした。
戸籍は、このように、切れ目なくつながっています。
これで、先ほどの戸籍とこの改製原戸籍のつながりが確認できました。

戸籍事項を見ると、
昭和44年1月15日に佐倉市の本籍から「転籍」して、この戸籍が作られたことがわかります。
「転籍」は、本籍を変えることです。
この戸籍の場合、佐倉市の本籍から船橋市の本籍に変えたため、新しく作られた、ということです。

次に、筆頭者の甲山太郎さんの身分事項を見ると、
平成6年11月1日に亡くなって、除籍になったことがわかります。

そして、先ほどの戸籍には載っていなかった長女の竹子さんですが、
婚姻(結婚)して、除籍になったことがわかります。

さて、次に取るべき戸籍は?
転籍前の戸籍です。

佐倉市に「本籍:佐倉市弥勒町92番地」「筆頭者:甲山太郎」の「除籍」を請求しましょう。
「除籍」は、戸籍に入っていた全員が、別の戸籍に入ったり、亡くなったりして、誰もいなくなった(除かれた)戸籍です。
転籍すると、戸籍に入っていた全員が新しい本籍の戸籍に入るので、転籍前の戸籍は除籍になります。

転籍~婚姻

船橋市に転籍する前の除籍を見てみましょう。

昭和23年式戸籍(除籍)1枚目昭和23年式戸籍(除籍)2枚目

戸籍事項を見ると、
昭和30年6月1日に婚姻(結婚)により、この戸籍が作られ、
昭和44年1月15日に転籍して消除されています。

先ほどの改製原戸籍は昭和44年1月15日に作られたものでした。
これで、先ほど改製原戸籍とこの除籍のつながりが確認できました。

この戸籍は昭和30年6月1日から昭和44年1月15日までのことが記載されているので、昭和44年12月25日生まれの長男さんはまだ出てきません。

さて、次に取るべき戸籍は?
松子さんの婚姻(昭和30年6月1日)前の戸籍です。

これは、一番最初に取った戸籍(最新の戸籍)の松子さんの身分事項に書いてある「従前戸籍」です。
松戸市に「本籍:松戸市岩瀬1番地」「筆頭者:乙川五郎」の改製原戸籍または除籍を請求しましょう。
※戸籍に入っている人が全員除籍しているかわからないので、改製原戸籍または除籍になります。

婚姻~出生

婚姻前の改製原戸籍を見てみましょう。

NEW大正4年式戸籍1枚目
NEW大正4年式戸籍2枚目

この戸籍には、「前戸主」や「戸主」が出てきます。昭和23年より前の戸籍です。
戸籍事項の欄がなく、戸主のところに、戸籍事項と戸主の身分事項が一緒に記載されています。

戸主」の欄を見ると、
大正14年11月3日に乙川五郎さんが分家して、この戸籍が作られ、
昭和36年3月20日に改製されて、この戸籍が消除されていることがわかります。

松子さんの欄を見ましょう。
昭和30年6月1日に甲山太郎さんと婚姻して除籍になったことが記載されています。

先ほどの除籍は昭和30年6月1日に作られました。
これで、先ほどの除籍とこの婚姻前の改製原戸籍のつながりが確認できました。

また、この改製原戸籍が作られたのは大正14年なので、昭和10年3月3日生まれの松子さんの出生以前からある戸籍です。
つまり、この戸籍が松子さんの出生当時の戸籍となります。

これで、松子さんの現在の戸籍から出生当時の戸籍までさかのぼることができました。

相続人の方の現在戸籍から亡くなった方の戸籍までたどる方法

亡くなった方の本籍はわからないけれど、相続人の方の本籍はわかる場合、相続人の方の戸籍から亡くなった方の戸籍までたどることができます。

相続人の方の戸籍から、亡くなった方の戸籍までたどる方法は、相続人の方と亡くなった方の関係によって変わります。

  • 亡くなった方との関係:親子
    お子さんが未婚の場合は、多くが親と同じ戸籍です。
    お子さんが婚姻(結婚)によって親の戸籍から出ているときは、お子さんの現在戸籍に記載されている「従前戸籍」(婚姻前の戸籍)が親の戸籍です。
  • 亡くなった方との関係:兄弟姉妹
    親が筆頭者(戸主)の戸籍までさかのぼって、亡くなった方の戸籍を追いましょう。
  • 亡くなった方との関係:甥姪
    親の婚姻前の戸籍(祖父母が婚姻した頃)までさかのぼり、亡くなった方の戸籍を追いましょう。

おわりに

戸籍は見慣れない分、最初は何が書いてあるのか、何を意味するのか、わかりづらいかもしれません。
特に、手書きの戸籍は、くせのある字であったり、今は使われていない字であることも多いので、読み解くのに悪戦苦闘するかもしれません。
そのようなときは、戸籍を発行してくれた役所に問い合わせるのも一手です。
また、手元にある戸籍のコピーを見せて(郵送申請の場合は同封して)、「この戸籍の前の戸籍が欲しいです。」のように伝えると良いでしょう。

さらに、相続人が多いと、戸籍を集めるだけで一苦労の場合もあります。

相続問題でお困りのときは、弁護士へのご相談をお勧めいたします。

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