労働問題

未払残業代を請求するために

■ 未払残業手当の請求と立証責任

近年、労働者から会社に対し、未払いのままになっている残業代(時間外手当)の請求を求める事件が増加しています。
その場合、いちばん大変なのが、未払いの残業代の金額は幾らなのか、つきつめると残業時間は何時間だったのか、という事実の証明です。

法律の建前からすれば、請求する側、すなわち労働者に具体的な残業時間を証明する責任があります(証明できなければ負け、という意味です)。

ただ、実際問題として、労働者の手元には資料がないケースが多く、また会社内部に資料がある場合でも、裁判上の証拠保全手続をするとなると、コストの面から到底釣り合わない場合が大半だと思われます。

■ 確保しておくべき証拠

したがって、未払いの残業代をきっちり払ってもらうためには、日頃から証拠の確保に努めることが肝要です。

収集・確保しておくことが望ましい証拠には、以下のようなものがあります。

1 タイムカード・出退勤システムのデータ

残業時間を証明するために重要なのは、まずタイムカードです。
多くの会社で出退勤管理にタイムカードが利用されていますが、これは客観的で信用性が高い証拠ですから、裁判上も重視されます。

最近は、クラウド型の出退勤管理システムを利用している会社が増えていますが、そうしたデータを印刷したものも同様に信用性が高い証拠といえます。

通常、残業手当を請求する全期間のタイムカードやデータ(の写し)を労働者側が持っていることは少ないでしょうが、一部でも保管していれば、一日あたりの平均残業時間を算出し、それに基づいて残業手当を推定計算して請求する、という手法も用いられます。

2 業務日報・業務日誌の写し

仕事の内容によっては、業務日報や日誌が作成される場合もあるでしょう。その日報等に業務時間が記載されている場合には、有力な証拠となります。つまり、交渉や裁判等を見越した段階で作成されたものではないため、証拠価値が高いと考えられるからです。

3 ICカード乗車券・業務関係のメールなど

タイムカードや業務日報等が手元にない場合でも、出退勤時刻を間接的に証明できる証拠があります。

まず、スイカやパスモなどのICカードの履歴には、改札の通過時刻が印字されていますので、だいたいの出退勤時刻が推定できます。自動車で通勤している場合には、コインパーキングの領収書も使えるでしょう。

また、業務に関してメールのやり取りをしている場合、有力な証拠となります。当事務所が扱った事例では、飲食店の店長が、一日の業務を終えて店を閉め、社長宛に売上の報告メールを送信してから帰宅していたというケースで、メールを退勤時刻の立証に使ったことがあります。

4 本人の日記や手帳など

こうした客観的証拠が何もない場合(タイムカードすらないブラック企業も珍しくありません)でも、「証拠がないから残業時間もなかったことになる」というのはあまりに酷といえます。
この場合、労働者が毎日の出退勤時刻を日記や手帳に記録していたのであれば、それは有力な証拠になります。確かに、客観的な証拠ではないので、信用性が高いとはいえませんが、日記や手帳が作成された経緯や他の資料との整合性から、信用性が認められる場合もあります。

これまで裁判で争われたケースからは、信用性が高いと認められるためには、
① 出退勤時刻だけでなく、日々の業務の予定や実際の業務内容が詳細に記載されている
② 出退勤時刻とそれ以外の事項が同じ筆記具で記載され、記載箇所も後から書き加えることが難しい箇所である
③ 他の客観的な証拠と整合している
といった要件を満たす必要があるようです。手帳に出退勤時刻だけ書いていたり、あるいはパソコンで作成したデータでは、信用性が認められにくいと思われます。

労働問題コラム

15/10/26
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