離婚問題

子どもの「親権者」と「監護者」は、何が違う?

親権

以前に比べて、離婚の際に子どもの「親権」を争うことが多くなったように感じます。
親権の決め方などについては、「親権の争い」に書きましたが、今回のコラムでは、「親権者」と「監護者」についてみていきます。

親権については、民法で次のように定められています。
「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」
「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。」
「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」
「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。」

結婚中は、夫婦が共同で未成年の子どもの親権を行使しますが、離婚後は、一方の単独親権となります。
離婚する前に、どちらが親権者となるか、決めなくてはいけません。
離婚届に記載欄がありますし、親権者は子どもの戸籍に記載されることになります(ただし、子どもの戸籍は自動的に親権者の戸籍に入るわけではありません。離婚時の夫婦の戸籍に入ったままです。)。

なお、親子の関係は親が離婚しても続きますので、子どもの扶養義務は、親権の有無に関わらず、また同居・別居に関わらず、両親にあります。

ちなみに、未成年者は結婚すると、成年に達したとみなされるので、父母の親権はなくなります(未成年者が結婚するには、原則として父母の同意が必要です。)。

身上監護権と財産管理権

親権は、未成年の子どもに対する「身上監護権」と「財産管理権」に分けることができます。
「権」とあるので、権利だけをイメージされるかもしれませんが、義務も伴います。
「親権者」は親権を行う親、「監護者」は親権のうち「身上監護権」だけ行う親、といえます。

東京高裁の決定(平成18年9月11日)では、
「監護とは,親権の主たる内容である監護及び教育(民法820条),子の居所指定権(同法821条),懲戒権(同法822条),職業許可権(同法823条)を中心とする身上監護権を分掌し,子の財産につき管理及び代理する権限ないし養子縁組等の身分上の重大な法的効果を伴う身分行為について代理する権限は,親権者に留保され,監護権者にはこれらの権限は帰属しないと解するのが相当であるからである。」
とされています。

「身上監護権」は、子どもの世話や教育、しつけなど次のような権利義務をいいます。
・監護、教育
・居所指定
・子の利益のための懲戒
・職業の許可

「財産管理権」は、子どもの財産の管理や法律行為の代理・同意・取消などを指します。

一般的には「親権」は分離することなく、子どもと一緒に生活する親が親権者として、どちらも担います。その方が子どもの利益になると考えられるからです。

海外勤務で子どもと一緒に生活できないけれど「親権者」でいたい、子どもが幼いので一緒に生活するのは母親がいいが財産管理は父親が適任である、などの場合、離婚時に「親権者」と「監護者」を分けて、子どもと一緒に生活する親を「監護者」とすることはできます。

民法には、協議離婚のときに、子の利益を最も優先して「子の監護をすべき者」を定めると書いてあります。
協議では決められないときは、家庭裁判所が監護者を決めるとなっています。

「身上監護権」は、離婚届にも、戸籍にも、記載されません。
そのため、夫婦で話し合って親権者と監護者を分けると決めた場合、合意書を作成することをお勧めします。

離婚前の「監護者」

離婚前に夫婦が別居状態になった場合、夫婦ともに親権者ですが、子どもと一緒に生活する親だけが監護者となります。

そして、離婚時に夫婦間で協議がまとまらず、裁判官が親権者を決める際、判断材料とする要素に「監護の継続性」があります。
子どもの環境は、特段の事情がない限り、安定的な方がよいとされているからです。

そのため、離婚後の親権者になりたい場合、別居時には子どもを連れて家を出ることをお勧めします。「後で迎えに来ればいい。」と考えて「監護者」であることを手放すと、ずっと子どもと生活できない可能性が出てきます。

また、双方が親権を主張する場合、子どもの(監護権の)取り合いになることがあります。
監護者でなかった親が、子どもの学校に待ち伏せして連れ去ったとか、面会交流後に返さなかったといったことが、ありえます。

ただ、実力行使で監護者から子どもを奪うことは、後々親権者としての適格性の点でマイナスになる可能性が高いです。
監護者に子どもの養育を任せられない事情がある場合は、家庭裁判所に「子の監護者の指定・変更」、「子の引渡し」調停又は審判を申し立てることができます。

離婚時に親権者と監護者を分けるときの注意点

親権者と監護者を分けるのであれば、離婚後も子どものことで協力していける関係であることが必要です。
例えば、子どもが交通事故にあい、裁判になったときの法定代理人は親権者となります。子どもが奨学金の申請をする際にも親権者の同意が必要です。

また、監護者が再婚する際、再婚相手と未成年の子どもが養子縁組するときにも、親権者が子どもの法定代理人として養子縁組届に署名押印することになります。

色々な場面で、親権者の協力が必要なことが出てきます。

多くの場合、離婚するときの夫婦関係は最悪です。
離婚後に協力関係を保てるか、冷静に考えてみましょう。
離婚の話し合いで、「早く離婚したいから、子どもと一緒に生活できるなら、親権は相手に譲ってもいいか。」と安易に妥協すると、後々大変なことになるかもしれません。

親権者、監護者の変更

離婚時にいったん決めた「親権者」を変更するのは簡単ではありません。
必ず家庭裁判所での親権者変更調停又は親権者変更審判を申し立てなければなりません。
調停での話し合いで合意できないときは、自動的に審判に移行し、裁判官が判断(審判)することになります。

親権者の変更は、子どもの生育に大きな影響を与えるものなので、慎重に判断されます。
親権者を変更しなければいけない事情や、これまでの養育状況、双方の経済力、子どもの年齢や意向など、子どもの幸せのためにどうした方がいいのか、様々な点が考慮されます。

一方、「監護者」の変更は親の話し合いだけでできます。
前述したとおり、市区町村への届出もありませんし、戸籍にも記載されません。

監護者変更の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に「子の監護者の指定・変更」の調停又は審判を申し立てることができます。
調停での話し合いがまとまらないときは、自動的に審判に移行し、裁判官が判断(審判)します。
その際は、親権者の変更と同じように、子どもの幸せの観点から慎重に判断されます。

まとめ

離婚するときに、子どもの親権でもめることはよくあります。
どの親も、子どもがかわいいと思うのは当然ですし、一緒に生活したいと考えるでしょう。中には、意地の張り合いで、親権を主張しあうこともあります。

しかし、親権を考える上で一番大切なのは、子どもの幸福です。
親権者=監護者にするにしても、監護者と親権者を分けるにしても、子どもにとって、一番望ましいと考えられる環境を用意できるようにしましょう。

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