離婚問題

例えばこんな離婚相談 ~その4~


前回「例えばこんな離婚相談 ~その3~」では、離婚したくない妻からの相談例をあげ、夫からの生活費の有無による手順の違い、不貞相手の女性に対する慰謝料請求についてお話しました。
今回は、「~その3~」の続きで、別居中の夫から離婚を迫られた場合についてお話します。

 

【夫から離婚を迫られた場合】


夫から離婚届の用紙が送られてきて、「署名押印して返送しなければ、生活費を止める」と言ってきたら、どうしたら良いのでしょうか。
こんなにひどいことを言う夫は、実は珍しくありません。
40歳をとうに過ぎ、思慮分別もつき、社会的経験もある男性が、なぜか不貞関係に陥ると、前後の見境もなく非道(そもそも不貞自体が非道ですが)に走るのです。


しかし、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。
別居期間が長いからといって、必ずしも離婚が認められるわけではないのです。


「~その3~」の例2のように、夫婦間に未成年の子がいたり、別居期間が同居期間と比較して短いような場合には、容易に離婚は認められません。
以前、5年間別居したら離婚請求できるとする民法改正案が検討されたことがありますが、改正には至っていません。
従って、5年間別居すれば離婚が認められるというわけではありません。


妻が本当に離婚したくなければ、離婚届に署名する必要も、調停で離婚に応ずる必要もなく、訴訟でも夫の有責性を争えば夫の請求は認められません。
離婚成立まで、妻は夫に婚姻費用を請求することができます。
婚姻費用の金額に争いがあるときは、家庭裁判所に調停を申立て、なお話し合いがつかなければ、審判で決めてもらえます。
(婚姻費用(生活費)については、「離婚までの生活費の決め方」をご覧ください。)

 

【離婚で悩んだら】


戻る当てのない夫とわかっていても、「離婚したくない」と言う妻は少なくありません。
ただし、その理由は様々です。
夫に対する愛情、意地、子どものため、お金(生活)のため、結婚するときに夫が妻を幸せにすると約束したから、自分が夫の終生の伴侶と決めて結婚したから・・・などなど、いろいろです。
子どものためと言いながら、本当は自分の体裁のため、という場合もあります。


20年も婚姻生活を続けていると、いきなり「離婚」と言われても、そう簡単には結論を出せないでしょう。
ストレスで食事ものどを通らなくなり、不眠症に陥る妻も少なくありません。
そのようなときは、無理せず、時の経過に身を任せながら、「なるようになる。なるようにしかならない。」と考えることも、ストレスを軽減するひとつの方法です。


弁護士に相談するのも、ストレス解消には効果があると思います。
「聞いてもらえただけで、気持ちが軽くなった」とおっしゃる方が多いです。
弁護士はいろいろアドバイスしますが、人生の方向を決めるのはご自身です。
ご相談者が離婚すべきかどうか迷っているときに、弁護士は無理に結論を求めません。
迷っている状況で、最善の策をアドバイスします。


弁護士のアドバイスのひとつに、金銭的な問題があります。
離婚を先送りした方が有利か、早く離婚した方が金銭的に有利になるか、ということです。
ご家族のあらゆる状況を考慮に入れて検討すべき問題ですので、一概には言えませんが、一般的に言えることを以下に記します。

 

【離婚を先送りした方が得な場合の例】


自宅に多額のローンが残っているなど、夫の財産はそれほど多くないが、収入が高く、夫から払われる婚姻費用が高額の場合は、離婚を先送りした方が得です。
例えば、毎月20万円の婚姻費用を支払ってもらえるならば、2年間で480万円を受け取れる計算になります。
慰謝料や財産分与として同等の金額の支払いを得るのは、たやすくありません。
子どもが大学に行っているとか、私立高校に通っている場合、離婚しない方が教育費を払ってもらえる可能性が高いです。

 

【早く離婚した方が得な場合の例】


夫の財産が相当あり、離婚した場合、財産分与だけでなく、慰謝料も確実に払ってもらえる場合は、早く離婚した方が得です。
別居期間が長引くと、その間に不貞相手の女性にマンションを買い与えたり、預貯金が不貞相手の女性との生活費に使われ、分与されるべき財産(別居時に保有していた財産)がなくなってしまうおそれがあります。


理論的には、離婚の際は、夫婦が築いた財産を、別居時を基準として2分の1ずつに分けることになっています。
しかし、現実問題として、離婚時に夫が何も財産を持っていないと、審判や判決で夫に対する支払い命令が出ても、差し押さえる財産がなく、何ももらえなくなるおそれがあります。
ちなみに、年金は差し押さえができません。


また、夫が退職間際の会社員の場合、夫が退職する前に、退職金が夫に全額支払われないように仮差押えをしておく必要があります。
退職金が一旦夫の預金口座に入金されると、全額払い戻されて隠されてしまうおそれがあるからです。
しかし、仮差押えをするためには、離婚が前提となります。
離婚に伴う財産分与や慰謝料請求権は、離婚時に発生する権利だからです。
したがって、仮差押えをした後は、妻から離婚請求の調停や訴訟を起こす必要があります。


また、例2とは異なりますが、夫の収入が低く、見るべき財産もない場合は、早く離婚して、母子手当やそのほかの公的援助を受けた方が良い場合もあります。
離婚した場合に受け取れる公的援助については、市役所の窓口やインターネットで調べてみてください。

 

離婚問題でお悩みの方へ


4回にわたって、2つの例をあげて離婚の手順をご説明しました。
お一人お一人、「次に何をすべきか」は違いますが、ご参考になれば幸いです。
今、離婚問題でお悩みの方は、まずは一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

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